鶴は幸せを運ぶのか Ⅱ (ページ24)

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乱雑にドアを閉めた音が響いてから、キーボードを無心で叩き続ける。
編集長と令子サン、そして私の三人がかりで、必死に3000万円をかき集めた。

それから何十分経っただろう。もしかしたら数分なのかもしれないし、体感では数時間経っているけれど。

ーピルルルル…

本日二度目の、電話が鳴った。
今度は編集長のケータイ。

「真司か、どうした」
「はぁ…」

呼び出し人は真司。
令子サンも私も席を立って、編集長の手元に耳を傾ける。

「それが…指定の場所に着いたんですが…応答がなくて……ッわ、」
「？！…オイ真司、どうしたんだ、」

突如、電話の向こうから聞こえた衝撃音。編集長は驚いたようだが、犯人を刺激しないよう、あくまで柔らかい声音で語りかける。

しかし、その後も連続して音が響く。人体が壁に叩きつけられる音、木製の何かが壊れる音、鉄製の何かが硬い物にぶつかる音。
犯人は武器を持っているらしい。

そしてとうとう、ザー…という音がして、それ以外の音が聞こえなくなった。
真司の持つケータイが壊れたのだろう。

「真司？！オイ真司！オイ！」

編集長が叫んでも応答はなし。

「ヤベェなこりゃあ…令子、警察に連絡だ」
「ハイ」

もうなりふり構って居られない。

真司に攻撃を仕掛けているのなら、放っておけば島田サンも彼も殺されるかもしれない。
だったらもう、警察に言えば殺すという脅しは通用しないだろう。

令子サンが警察に、洗いざらい全てを話す。

どうか警察が間に合いますように。
二人が無事に帰ってきますように。

ひたすら願った。
ここから、真逆あんな方向に話が進むなんて思いもよらぬまま。