鶴は幸せを運ぶのか Ⅱ (ページ17)

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「大体アイツには、時間の観念ってモンがないんだよ」
『今更ンなこと言ったってしょーがないでしょ。手動かしてください』
「手厳しいなァ…あーあ、俺の原稿手伝わせようと思ってたのにあのヤロー…」

令子サンは取材、真司は無断欠勤。それ故、三人で仕事中のOREジャーナル。

時計はあと数秒で六時を告げる。
もうすぐ定時だというのに＿＿編集長の机には、散らかりまくった書類達。

かく言う私は、自分の仕事は終わったので編集長の書類整理を手伝っていた。
社長思いの良い社員だこと。後でご飯でも奢ってもらわないとな。

「朝から電話一本寄越さねぇで…」

編集長は仕事をしながらも器用に、真司への愚痴をこぼす。

「でー島田ァ、」

それから、島田サンの方へ視線を向けた。
彼女のデスクトップパソコン…アマリリスの上には、小さな置時計が。プラスチックの軽いソレは、小さいながらにもしっかり時間を刻んでいた。

島田サンの瞳は、時計しか見ていない。

「お前今日アレか。残業、アリ？」

編集長がそう言った時。

《お時間でござる！》

時計から流れたその音声。

途端に島田サンは立ち上がり、バッグと上着をひったくるように掴んで、仕事場から姿を消した。途中上着を扉に挟んだが、無理やり引っ張って出ていった。振り返ることも引き返すこともなかった。

一瞬の出来事だった。

「あー……」

恐ろしく速い帰宅……私でなきゃ見逃しちゃうね。