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周辺を探索するように蓮と別れて走っていると、遠くからクラクションの音が聞こえてきた。
一瞬何かを伝えるために鳴らしたのではなく、何度も繰り返すように聞こえるその音。
蓮だ。優衣を見つけたのだろう。
依然聞こえるその音を頼りにバイクを走らせる。そして見つけた蓮の姿。
彼は車の後をつけていて、その車のドアからはコートの裾が見える。優衣のコートだ。ドアに挟まれている。
…やっぱり、その車は須藤サンの車だった実際に乗ったのだ。間違えはしない。
須藤サンを追う蓮、蓮を追う私。その距離は伸びることも縮むこともなく。
ソレをしばらく続けていると、前から真司がやってきた。
「Aちゃん！」
真司が方向転換し、私を呼び止める。蓮の行く道を確認してから、ブレーキを掛けた。
「何してんだよ、」
『…優衣が攫われたの』
「なっ…！」
『見失うから行くよ』
「あっ、ちょっと！」
もう一度バイクを走らせて、蓮の後を追う。先程見た蓮が入った道、音、そして激しい運転によって出来た轍を、道標に進んだ。
『蓮！』
「A！」
追いついた先に、蓮と…須藤サン。車の中を覗けば、眠っているだろう優衣がいた。
「Aさん」
『…須藤、サン…』
須藤サンはいつものように笑った。
「優衣を巻き込むのは止めろ。コイツはライダーじゃない！」
「神崎士郎の妹でしょ。抱え込んでおけば、何かと有利だと思いましてねぇ。貴方もそうでしょう？」
蓮が目を見開いて、怒りを顕にする。須藤サンはソレをものともせずに、蓮の後ろの私に笑いかけてきた。
『…私が兄さん…神崎士郎の妹だってことは、知っていたんですか』
「ええ。昨日」
『じゃあ何で、私じゃなくて優衣なんです。私なら、連絡先知ってるし、呼び出すのだって簡単だったのに…。何で、優衣を…！』
何で優衣を巻き込んだんだ。
言えば、須藤サンは申し訳なさげに目を逸らした。落ち着きを取り戻した蓮が、揶揄うように口を開く。
「真逆、惚れた女を巻き込むのは嫌だったとか言うつもりじゃないだろうな」
「…だとしたら？」
「……！」
その言葉に蓮はまた驚いて、言葉を失った。告白紛いのソレを、須藤サンは気にする様子もなく笑う。
「卑怯な手を使うようなヤツに、Aを渡す訳にはいかない」
「貴方はAさんの何なんです」
「正面切って戦うのは苦手か」
「別に。なるべく手間を省こうと思っただけですよ」
二人がデッキを取り出した。
戦いが始まる。そう、思った時。
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2022年9月24日 18時
