笑って、オンディーヌ (ページ46)

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番外編ソニックとの出会い１ページ46

いつも通り怪人退治をして、その帰り道。人混みが好きでない私は、大通りを外れ、人気のない路地を歩いていた。
もう日は沈んで、路地では街灯の光も月の光も届かない。流石に不気味だなと思いつつ、引き返せないので路地を歩き続ける。

すると。

「動くなっ！」
『ッ、』

突如、後ろから口元を塞がれた。声や気配から察するに男であろう。そしてなにやら、声も体も微かに震えていて、焦りが見える。

面倒臭いことに変わりはないけど、オバケなんかよりもずっとマシ。理由は殴れば勝てるから。

「動くと殺すぞっ！」
『…。』

ボーッと突っ立っていれば、後ろから怒鳴られる。状況は良く分からないけれど、とっとと帰りたいのでこんな茶番に付き合うつもりは無い。

「ぐっ？！」

拘束もそこまできつくなかったので、右肘を相手の鳩尾に沈める。驚いたのか相手は腕を外し、蹲った。手応えはあったので相当痛いだろう。そのまま首に手刀を入れれば、それは見事に倒れた。

相手は思った通り男であった。顔は隠していて、全体的に黒い服装。強盗でもして逃げてきて、人質にしようとでもしたのかしら。

マ、ここに長居する意味もないので、男はそこに置いたまま歩き出す。

と、

「待て。」
『！？』

後ろから声がかけられた。男の声である。

先程までは人どころか猫の一匹も居なかったのに、物音の一つもしなかったのに。突如聞こえたその声。流石に怖くて、腕を構えたまま後ろを振り向く。

「…お前、名前は。」

目に映ったのは、街灯に照らされた、しなやかなシルエット。

『…水瀬、A…。』
「そうか、A…。A。」

彼が目にも止まらぬ速さで手を動かせば、倒れている男が微かに体を揺らした。目を凝らせば何かが刺さっていて、不透明な液体が流れ出てくる。…多分、血だ。

「俺は音速のソニック。」

目の前に広がる光景に目を奪われていれば、告げられたその言葉。

『……え？』

音速のソニック…。この頭痛が痛いみたいな名前は、前世で何度も聞いてきた名前…。

混乱する頭をなんとか整理すれば、この状況も飲み込めてきた。
さっき襲ってきた男は、ソニックに殺されかけて逃げていたのだろう。暗殺もボディガードも請け負うって原作で言ってたし。

それは、理解出来たけれど。

「A、俺と戦え。」
『…は？』

…この状況は、意味分かんないよね。