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『お、』
人の流れに逆らって走れば、思った通り怪人が。
災害レベルは鬼…か。
怪人の仕業だと思われる瓦礫の中から、鉄パイプを引っ張り出す。それによって鳴った音に気付き、怪人が私に目を向けた。
伸ばされた腕は重心をズラして横に避け、コンクリートに命中した相手の腕に鉄パイプを振り下ろす。それによってバランスを崩して自分側に倒れてくる怪人の頭にジャンプで飛び乗り、思いっきり頭を鉄パイプで殴った。
怪人の頭は無惨にも潰れ、紫がかった血液が飛び散る。対策の為に殴った瞬間距離をとったから、幸い血は被らなくて済んだが…。もし被っていたらと思うとゾッとするな。
『あ、人いたかな』
と、気を取り直して辺りを見渡す。しかし見えるのは瓦礫、瓦礫、瓦礫…。人の気配なんて何処にも…あれ？
ーﾄﾞｯﾄﾞｯﾄﾞｯﾄﾞｯ
この音。…まるで、心臓の、鼓動音の様な。
『誰か、います？』
音の方へと歩く。瓦礫の壁に隠れていた、その人は。
『え』
｢あ、｣
深く被ったフードの下に見える金髪。目元の三本の傷跡。何より、鳴り響く鼓動音…世間様の言い方を借りるのならば、キングエンジン。大きな身体をこれでもかと縮ませ冷や汗をかき続ける彼は、紛れもなく。地上最強の男と名高い、キングであった。
｢…えと…強いんだね…｣
『…ありがとうございます。もしかして、キングさん…ですか？』
｢っえあ、｣
私が名前を言えば、泳ぎまくる彼の目。涙を溜めながら必死に言い訳を探している彼を見ていると、なんだか私が悪い事をしているよう。
『…いや別に。言いふらすとかはしないので。ヒーローにも色々あるんでしょう？改めて…水瀬Aです』
｢…うん。初めまして、A、さん｣
『いや別にさん付けは…まぁいいや。それじゃひとまず私はこれで』
そう言って立ち上がる。多分この手柄もキングさんのものになるのだろう。彼により多くの期待がのしかかることになる。ま、死ぬことはないだろうしいっか。よし、帰ろう。
一歩踏み出そうとしたその時。
『って、それ＿＿』
もはやこれは、運命だと思う。
｢え？｣
『その、持ってる、袋って』
キングさんのもつ袋から見える、何かのパッケージ。それには、様々な銃が描かれている。
｢…こ、これは新作のFPSゲーム…グラフィックとか凄い綺麗で…。FPSは幾つか種類あるけど、これが一番オススメですな｣
『…あの』
もう一度言おう。これは運命だ。
『もっとゲームについてお話して下さい！』
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2022年9月5日 0時
