鶴は幸せを運ぶのか Ⅹ (ページ12)

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『ちょ、真司痛い痛い…ホラ、もう行ったから、ホラ！』
「真司君、犬怖いんだ」
「エ…？ンなワケなぃだろ…」
「ホントに…？」
『嘘つけよ…めちゃくちゃ力強かったじゃん…』

腰あたりに添えられた真司の手に力が籠って、流石に痛みを感じて引き剥がした。
いくら犬が苦手とはいえ、仮にも女を盾替わりにするのは如何なものか。いつか｢俺が守るから｣なんて啖呵をきっていた覚えもあるが、あの時の覚悟は何処へ行ったのか問いただしたいものである。
勿論、先程述べた通り動物は好きなので、気にしてなどはいないのだが。

「そういえばさぁ、四人で出掛けるのって…何か初めてじゃない？」
「ウン…それはそうかも」
『確かに…気にしたこと無かったけど』

帰る場所が同じため考えたことすら無かったが、四人揃って出歩くというのは何気に初めてかもしれない。
偶然出会う、なんてことはあったけれど…初めから行動を共にしたことは無かったハズだ。些細なことかもしれないが、こういう時間も中々良いものである。

「なぁ」
「…」
『蓮…やっぱり犬怖い？』
「真逆」
「って、今逃げてたろ！」

未だ多少のぎこちなさはあるものの、次第にいつも通りの掛け合いが出来るようになってくる。要するに、ギスギスした空気が取り払われていくということだ。
叔母サンに追い出された時は面食らったが、彼女はこうなることを見越していたのかもしれない。だというなら、流石というか何というか。

その時、私達が浮かべていた笑顔。ソレが表す感情は、紛れもなく"幸せ"であった。