97 ページ9
「…ごめんな、脅すようなマネして」
『…え？』
「腕、痛くない？掴んじゃったから」
北岡サンは先程とは打って変わって、落ち着いた様子で言った。掴んでいた私の腕を心配して、心底申し訳なさそうに謝る。
一瞬二重人格か何かか？と思ってしまったけれど、実際、数人に家を訪問され問い詰められるという状況に陥っては、焦っても仕方ないとは思う。
あの状況は、見ていて流石に気の毒かもしれないと思ったし。
…いや、真司を殺そうとしていたのだから、あのくらいじゃマシな方か？
ともあれ、焦ったとしても暴力に訴える訳じゃなかったし、今も直ぐに切り替えて謝ってくれる。
本人が心配していた腕だって、大した力は込められていなかった。蓮に掴まれた手首の方が痛いくらいだ。
マァ、一言で言えば大人なんだろう。蓮には是非とも見習って貰いたいものだ。蓮にも理由があるというのは、重々承知の上だけど。
大丈夫だと答えれば、北岡サンは安心したように笑って、折角残ってくれたのだからと当たりを見渡した。
もてなそうと思ってくれているらしい。
「…マ、座ってよ。こっち…」
『ッ、』
「！……どうかした？」
先導されるように手首を掴まれ、引かれる。その力自体は強くもなんともなかったのだけれど、手首の方が赤くなる程傷んでいたので、つい痛みに驚いてしまった。
北岡サンは不審そうにスーツに隠れた手首を見詰めて、それから一つ断りを入れてから私の袖を捲る。
「うっわ…」
『あーらら…』
露出した右手首は真っ赤だった。
蓮が掴んでいた時間は…北岡サンが腕を掴んでいた時間より短いんだけどなぁ。
なんて思っていれば、北岡サンはもう片方の手首を訝しげに見る。
「ちょっといい？」
『？ハイ』
「…ッうわ、嘘でしょ？」
捲っていいかと聞かれたので承諾すると、見えたのは赤黒くなった左手首。流石にコレにはちょっとびっくりした。朝見た時には、こんなことになってなかったので。
「コレ、もしかして」
『あー…昨日ね、アレから色々ありまして。ちょっと蓮に掴まれちゃって』
「DV彼氏かよ…」
ただの彼氏面のがよっぽどマシだよ…なんて言う北岡サン。
それに、いつもこうってワケじゃないんですよと返せば、ソレDV彼氏を庇う常套句だからね？と言われた。否定はできん。
マァ兎に角、先程までの険悪な空気はどこへやら。
ソファに座りながら北岡サンと話していると、ドアが開いて由良サンが入ってきた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 15人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みーちゃん - 龍騎本当大好きなので本編沿いの小説がでてくれてうれしいです！これからも頑張ってください！応援してます！小説を書いていないので大変さは分かりませんがファイトです！ (2022年10月25日 19時) (
レス) id: ee873f9c2a (このIDを非表示/違反報告)
ますこ - 龍騎、大好きなので楽しんで読ませて頂いてます！これからの更新も楽しみにしてます！ (2022年10月17日 20時) (レス) id: 0698efded3 (このIDを非表示/違反報告)
okaka - 今、ちょうど龍騎を見ているのでとても楽しく読んでいます。この作品でとても癒されています！大好きです！！ (2022年10月16日 21時) (レス) id: 87b1e34c00 (このIDを非表示/違反報告)
いとこんにゃく(プロフ) - 好きすぎて一気見しちゃいました…ほんとに大好きな作品です；；これからも応援してます…！ (2022年10月16日 5時) (レス) id: ebebe27350 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2022年10月9日 22時
