兄妹 ページ1
「ただいま、A」
「ただいま、お姉ちゃん」
『おかえり、兄さん、優衣……』
兄と妹が家に帰る頃、少女は決まって、玄関を入ってすぐの階段に腰掛け、二人の帰りを待っていた。
それが分かっているから、二人は寄り道もせず、一直線に家に帰るのである。
それから数時間、子供達は自分達の部屋で、彼らの親が帰るまで、幸せな時間を過ごした。
階段を上がってすぐの、小さな部屋。殆ど隔離部屋のような部屋が、子供達…兄と妹の部屋である。
学校で習ったこと、鏡の中のモンスターのこと、道端に咲いていた花のこと。
取り留めのない話をつらつらと話せば、家の外を知らない少女は嬉しそうに笑う。
普通の人間では嘘のように感じる話でも、少女は素直に信じた。少女が自分の兄妹を疑うことはなかった。
彼女は、兄妹が自分に嘘をつかないと信じきっていたのだ。
何時に帰ってくると兄妹が言えば、決まってその時間に帰ってくるし、明日こういう本を借りてきてあげると兄妹が言えば、決まって次の日その本は手元にあった。
閉鎖された世界で生きる少女にとって、兄妹は全てだった。
「それでね、コレはダークウイングっていってね…」
『わ、かっこいい。強そうだね』
「うん。お姉ちゃんのことも守ってくれるよ」
妹は絵を描くのが好きだった。
彼女が見るという鏡の中のモンスターの絵は、子供部屋一面に溢れていた。
妹は、少女にとっての存在意義だ。姉と慕ってくれる、守るべき存在。それがあるだけで、生きていていいのだと、生きていなければならないのだと思う。
「A、怪我は痛くないか？」
『ちょっとだけ。…でも、大丈夫だよ、お兄ちゃん』
「……」
兄は、自分を守ってくれる唯一の人間だった。自分の弱みを見せることができ、それを包み込んで肯定してくれる人間。
兄が黒と言えば黒に、白と言えば白に変わる。そんな具合になってしまうのも無理はないだろう。
そのくらい、少女にとって兄は絶対だった。
少女の希望は、兄妹のみであった。
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みーちゃん - 龍騎本当大好きなので本編沿いの小説がでてくれてうれしいです！これからも頑張ってください！応援してます！小説を書いていないので大変さは分かりませんがファイトです！ (2022年10月25日 19時) (
レス) id: ee873f9c2a (このIDを非表示/違反報告)
ますこ - 龍騎、大好きなので楽しんで読ませて頂いてます！これからの更新も楽しみにしてます！ (2022年10月17日 20時) (レス) id: 0698efded3 (このIDを非表示/違反報告)
okaka - 今、ちょうど龍騎を見ているのでとても楽しく読んでいます。この作品でとても癒されています！大好きです！！ (2022年10月16日 21時) (レス) id: 87b1e34c00 (このIDを非表示/違反報告)
いとこんにゃく(プロフ) - 好きすぎて一気見しちゃいました…ほんとに大好きな作品です；；これからも応援してます…！ (2022年10月16日 5時) (レス) id: ebebe27350 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なちなちこ。 | 作成日時：2022年10月9日 22時
