二十九匹 ページ38
探偵社の社長、福沢諭吉。
この人は本当に強い方だ。純粋な強さがある。
正義の心、武力、どれもが素晴らしい。
…僕にはどれもないものばかりだった。
「そこの太宰めが[有能な若者が居る]と云うゆえ、その魂の真贋試させて貰った」
社長がそう云うが彼はまだあんぐりと口を開けている。
そんな彼を気にせず太宰君が続けて話し出した。
「君を社員に推薦したのだけど如何せん君は区の災害指定猛獣だ。保護すべきか社内でも揉めてね」
『それで、社長の一声でこうなった、と?』
「その通りです。Aさん」
武装探偵社の入社試験。これは恒例だ。
魂の真贋を試すという裏試験。
彼は少し違う感じになってしまったけど…。
本人の合意はまあ…ね?
「で、社長……結果は?」
皆が気になっていた問いを国木田君が社長に投げ掛けた。
心なしか敦君は顔が強張っていた。
そういう僕も少しは緊張しているのだけど。
ぼーっとその光景を眺めてると社長は目を伏せてこう云った。
「太宰に一任する」
…合格ね。成る程。
社長は結果を伝え終わったからか部屋から出て行った。
「……………」
「合格だってさ」
状況が飲み込めてなかった彼に太宰君が声を掛けた。
彼はそう云われて漸く理解したようにはっとした表情になった。
「つ、つまり……?僕に斡旋する仕事っていうのは」
「此処の………?」
彼の驚きが隠せない声に太宰君はクスりと笑った。
相変わらずの男だなと僕は再認識した。
「武装探偵社へようこそ」
『……こりゃ面白そうだね』
これからよろしくね、敦君?
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強いうさぎLv3 - 新美南吉…!!地元…!!(嬉しい) (2019年6月14日 20時) (レス) id: 1eba992f2c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:百合 | 作成日時:2018年8月5日 19時