背中を押してもらったから ページ21
あれから、結構な月日が経った。
私が以前働いていた時のマネージャーに電話をかけ、ハピプロではなく私が所属していた事務所に無理言って再所属させてもらった。
一時休止を、活動再開へ。
再始動したばかりの頃はネットで色々荒れたし、賛否両論って感じだった。
でも、そんなことで挫けるわけにはいかない。
背中を押してもらったんだから。
演劇科の仲間も、芸能界については応援してくれている。
カメラはまだ慣れないけど、慣れようと努力してる途中。
衣更への答えも出さないとだし、いろいろやることが沢山だけど。
今は、活動再開おめでとう！！ということで衣更の家にお邪魔している。
｢ごめんな？あんまりいいおもてなしできなくて｣
『いやいや、全然いいよ。衣更の家来たの久しぶりだね』
｢そうだっけ？あーでも、前来たのって中学の時か｣
話すのも久しぶりなので、つい話が弾んでしまう。
『そうだよ。紹介したい漫画があるからって、仕事の合間を縫ってコソコソとね』
｢あの時楽しかったよなぁ！スパイみたいでさ、家の中なのに安全確認とかしたりして！｣
『それ衣更だけだったけどね？』
今でも思い出せる話に、ケタケタと笑ってしまった。
………よかった。普通に話せてる。
｢Aも、今ではもう引っ張りだこだろ？｣
『前ほどでは無いけどね。ありがたいことだよ』
｢そのせいで、中々会えなかったもんが今じゃ全然会えないもんな〜｣
そもそも学科が違うもんなぁ〜と、呑気に考えていた。
｢A、知ってっか？｣
『なにを？』
｢今日、この家俺らしかいないんだぜ｣
えっ。
『いやいや、嘘でしょ。だって衣更、昨日妹いるけどいいか？って言ってたじゃん』
｢それ、実は嘘｣
してやったり、と言いたげな衣更の顔。
｢だからな、｣
こういうこともできるんだぞ。と言いながら、衣更は私の顔に近づいてくる。
それはもう、キスができそうなくらい近い距離だった。
衣更の顔が急に近づいてきて、恥ずしいのか私の顔が段々と赤く染っていく。
『………え、と……』
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作者名：さかな | 作成日時：2023年3月31日 0時
