ＯＮＬＹ［HS］ (ページ17)

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そんな姉を差し置いて私が防弾少年団になった理由は、簡単にいえば一つ。
姉が絶望的な運動音痴で、ダンスが壊滅的に踊れなかったからである。
私が韓国に渡り、練習生になったきっかけは韓国ドラマが好きな母の影響だ。
母は姉の履歴書も送ろうとしたのだが、運動会のお遊戯を見て諦めたらしい。
それだけ姉のダンス音痴は壊滅的だった。

履歴書の内容は今となってはわからないが、PDさん曰く、酷く間違った韓国語が並べられていたらしい。
それでもなぜか書類審査をすり抜けた私は韓国に呼ばれ、オーディションで合格したのだ。それも男として。
そう、履歴書に母が間違えて「男」と書いてしまっていたのだ。

韓国に渡ったばかりの当時の私は韓国語は全く話せず、本当は女であると弁解できることもなく、そもそも男として扱われているなど梅雨知らず、私は男として練習に励んだ。

女だとバレたのは練習生になってしばらくしてから。
なんとなく違和感は感じていたが、ある日たまたま着替えているところにホソクオッパが突入してきたことがことの発端だった。

ホソクオッパは私の下着を見て、大きな声でごめん！と叫んで扉を閉めた。
着替え終えて部屋を出るとそこにはホソクオッパが座っていた。

HS「本当に、ごめんね」

「あー、大丈夫、です」

HS「女の子、だったんだ…？」

「はい」

そうだったのか～、と頭を垂れたオッパ(当時は周りに合わせてホソギヒョンと呼んでいた)は私を連れて、PDさんに会いに行った。

ホソクオッパは何やら一生懸命説明をしていたが、私が理解できるはずもなく、結局話し合い後に通訳の人が私のところに来て、男だと勘違いしてすまなかった、と伝えてくれた。
その日は戻っていいが、他の練習生には何も言わないようにと、釘を刺された。

そのまま追放されることを覚悟していた私だったが、結局私は事務所に残った。

最初のうちはパニックにならないよう、限られた人しか私が女であることを知らなかったため、ホソクオッパがいつもフォローしてくれた。

HS「A、今はいいけど、本当は僕たちのことは”ヒョン”じゃなくて”オッパ”って呼ばなきゃいけないんだよ」

なぜかオッパが私に最初に教えたのはこれだった。
意味が理解できず首を傾げると、「ヒョン、じゃなくて、オッパ」と繰り返した。
ホソクオッパはとにかく私に気を配っていつも先回りしてたくさん助けてくれた。

ホソクオッパには昔も今も助けられてばかりだなあ、と懐かしく思っていると、いつの間にか眠っていたらしく、姉の声で目を開けると見慣れた実家の風景が広がっていた。