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Episode 09 ページ10

人混みを縫うようにしてやってきた広場。
風が少し冷たくて二枚重ねてきたことに感謝する。

「センラさん、手……っ」

小さく聞こえた訴えるような声に慌てて手を離して、「ごめん」と謝る。
彼女から気にしてないと返ってきてその場が気まずくなる。
周りのカップルたちは仲良さそうにしてるのになんだか悲しい。

「あ、あの」
「な、なぁ」

丁度俺が言おうとしたところで彼女も口を開いたので言葉が重なる。
驚いて彼女の方を向けば彼女も俺の方を見ていたのか菖蒲色の瞳が見開かれているのが映る。

「え、っと、」

彼女が話すのを待っているとゆっくりと口を開くがすぐに閉ざしてしまう。
言いにくいことがあるのか、と少し悩み口を開く。

「ゆっくりでええよ」

安心させるように促すと小さく頷いて俺の方を見て、口を開いた。

「あの、いやだったら断ってもらっていいんです、けど…………わたし、センラさんのことが、」

そう言いかけた時に手を引いて無理やり口を閉ざす。
そのまま手を伸ばし、彼女の唇に指を置いて出来るだけ優しく微笑む。

「こっからは、俺に言わせて? Aちゃんのこと、すきです。付き合ってくれませんか?」

なんで言ったか分かんない。
彼女が先に言うのが嫌だったのかもしれない。
でも、目の前の彼女が信じられないと言うように目を見開いているのは、こうでもしないと見られないのならいいかもしれない。

「ぇ、わ、たしで、いい、の……?」

薄い膜が張られた菖蒲色の瞳が俺のことをしっかりと見つめた。
華奢な体に手を回して、離さないというように抱き締めて告げた。

「Aちゃんじゃなきゃ、あかんの」

ポロポロと流れてきた涙を指で拭って優しく微笑んだ。
計画変更なんてものじゃない。
でも、Aちゃんが笑ってくれるなら、それでいいような気がした。

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蘭渚(プロフ) - ただのセンラ―さん» いえいえ〜!ありがとうございます、聞いてみますね〜! (2019年5月27日 20時) (レス) id: b3cf2c91ae (このIDを非表示/違反報告)
ただのセンラ― - コメ返ありがとうございます!さかたんが歌ってるのでおススメですよ((更新楽しみにしてます (2019年5月27日 19時) (レス) id: 48d1717d9d (このIDを非表示/違反報告)
蘭渚(プロフ) - ただのセンラ―さん» コメントありがとうございます!わぁ、すごい嬉しいです!友達から聞いてタイトルだけ知ってる感じですかね〜、少し参考にしましたけどね……!本当に嬉しい言葉ありがとうございます、頑張ります! (2019年5月27日 19時) (レス) id: b3cf2c91ae (このIDを非表示/違反報告)
ただのセンラ― - 題名からして大好きです。あれですかね、「僕は君のことが好きだけど君は僕のことが別に好きじゃないみたい」とか意識しましたか?(違ったらクソ恥ずかしい)まぁ、とにかく好きです。これからも頑張ってください (2019年5月27日 19時) (レス) id: 48d1717d9d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:凪桜 | 作者ホームページ:***  
作成日時:2019年5月27日 0時

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