【歌い手】君に幸福を、僕に愛を。 (ページ3)

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＊ページ3

若干濡れたパーカーをハンガーに掛けて、窓際に吊るす。
カーテンで閉め切った窓には水滴が幾つも付いていて、微かに見える外は目に見えるほどの大粒の雨がバシャバシャと降り注いでいた。
早めに帰って来てよかったな、と思いながらリュックをいつもの場所に置いて、そこから友人に借りた――無理やり預けられた――ゲームソフトのパッケージを取り出す。

テレビに繋ぐ感じで、幸か不幸か親が誕生日プレゼントにと渡したお陰でこのゲームは遊ぶことが出来る。
はぁ、とため息を付きながらソフトを入れて、電源を付ける。
そういえば、このゲームはどんな感じなんだろう。
乙ゲーなんて滅多にやらないし雰囲気も分からない。ただ、パッケージを見る限り糖度高めなストーリーなのか。

説明書を取り出したが、思わず絶句する。
これ、説明書か？と問いたくなるほどだ。
真っ白な紙にびっしりと敷き詰められた黒い文字。
普通、というか大体は白い面積の方が大きいんだろうがこの説明書は黒い面積の方が大きい。
いやいや、そんなになにを書くんだ。不信感が募り、そっとページを開く。
最初のページはよくある注意事項だ。
画面から離れる、こまめに休憩をする、といった旨のものばかり。
何ページかパラパラと捲っていった所だ。

さっきまでほとんど黒一面だったのに急に彩られた。
青、白、緑、紫、赤、黄色、桃色。
7色に囲まれた一際大きい文字には登場人物設定と記されていた。
これで少しは把握出来るだろうか、嫌になるほど書き込まれている文字の羅列にそっと目を向けた。