序章 ページ2
「大丈夫! Aでも楽しめるって!」
まともな恋愛経験がなくても、と余計な一言を告げる友人を軽く叩いて、その手にある胡散臭そうなパッケージの乙ゲーを受け取る。
パッケージにはキラキラとした飾りとザ、女子みたいな色遣いで描かれた可愛らしい文字。
「ねー、私こういうのやらないよ」
友人の方にパッケージを向けて、少しため息も出る中、言葉を発した。
友人はえー、と頬を膨らませて唸る。
可愛らしい顔立ちで愛嬌があると言われている友人だからこそ高校生でもこういう仕草が似合うんだろうな、と考えながらも返そうと友人の前に差し出す。
好きじゃないのはあまりやりたくないからなぁ……。
「……ね、おねがいっ」
手をパチって合わせて小首を傾げてあざとく微笑む。
あー、ほんとに。これだから友人は好きじゃない。
「はいはい、プロローグだけね」
淡々と帰る準備をしながらそう返せば友人はぱぁっと顔を輝かす。
同い年なのにこうも可愛らしい仕草が似合うのは緩いウェーブのかかった茶髪と愛らしい顔立ちの問題なのか。
「……終わったら、返すからね」
ニコニコと眩しい笑顔を浮かべている友人にそう告げると「知ってるよ」とだけ。
授業が始まりそう、バレない内に帰らなきゃ。
雨が降っているからと羽織ったパーカーのフードを被り、リュックだから空いた手をポケットに突っ込めばまるで不審者みたい。
始業のチャイムを背にして、私は扉を開け放った。
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ちょこ - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみに待ってます!(´;ω;`) (2020年1月21日 7時) (レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
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