貴方でした ページ6
そうやって前を向こうと決心して歩き始めた俺は通りかかった公園の前で携帯をいじっている少年を見つけた。
可愛い猫のキーホルダーを揺らして暇そうにしている。
「君の、名前はなんて言うの?」
小学3.4年生くらいだろうか。
紫色の綺麗な髪は茜色の光に照らされて輝いていて、液晶を写すその瞳も髪と同じくらいの色。
目の下にあるホクロが年に合わないくらいに大人っぽく見える。
薄手のパーカーを羽織った彼は俺の声に気付いたのか、携帯の電源を押して、ポケットに入れ、俺と目線を合わした。
「志麻って言うんだけど……」
優しい声は俺が好きな声で、思わず食いつくように質問をした。
「友だちと、遊ばないの?」
その問いに彼、志麻くんはこちらを不思議そうに見た後、告げた。
「いや、遊ばないよ。俺、あいつら苦手だから」
くすりと微笑む志麻くん。
「家族は、いるの?」
「そりゃいるけど……いま、両親の仲悪いし……」
「……隣、歩いてあげてもいいよ?」
「なんで上から目線なん?」
口を開けて笑う彼。
「んじゃ、並んで隣、歩いてや」
乱暴だけど暖かい手つきで頭を撫でられる。
役にも立てなかった俺は、いま、志麻くんに触れられている。
おかしいな、涙腺なんて切ったはずなのに。
涙が溢れて止まらない。
「……繋いでるから、手」
少しぶっきらぼうに告げる志麻くん。
ぎゅっと、繋いでて
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作者名:凪桜 | 作成日時:2019年1月14日 1時