Blue and sweet * :ﾟ

side story ページ35

「ほんま感謝しとるけん」

ありがとう咲紅と、言いながらビールをぐびぐび飲んでいくひとつ歳上の野球選手。柳田悠岐。


「メンタイの代わりの課長はとりあえず仮でおれがなることになったんですよ」


「ほーよかったやん、あおかのこと頼むわ」


「あ、はい」


おれは、あのギータと友人…そんなものではなくて、

ある日突然出会ったのだ。


会社を出た瞬間に、背が高い体格の良いチャラそうなお兄さんが近づいてくるのに怯えたもんだ



「経理財務会計課ですか？」


なんだ、仕事関係かと安心したのもつかの間、
…マスクしているけどわかる…

柳田悠岐じゃん…

「…そうですけど」


「ちょっといいすか」


有無を言わせず、近くの居酒屋に連れられ
よくわからない状況と軽い挨拶をよそに…やけに詳しい社内事情。

そして、メンタイというあだ名におれが笑っているのに味をしめたように



「これを使ってメンタイをどうにかして欲しいんじゃけど」


テーブルに置かれる、小型の恐らくカメラと、ボイスレコーダ


「10日間分くらい」


「いいんですけど…柳田さんは誰のためにここまで？」


うちの部署は決して人数が多いわけではないけど、野球選手の彼女がいるのかと思うと気になる。



「んー」


おれに話すのを少し躊躇っている。

彼は、野球選手だ。そう簡単に彼女だの言えないのかもしれない。
メンタイは嫌だし現にうちの部署は本当に疲弊している。

だから、まあいいんだけど…



「あおか」


「あ…瀬川あおかさん？」


「そう」

…彼女は確かにいつも顔色が悪く、窶れている
新卒なのにかわいそうだと思っていた


「教えてくれて、ありがとうございます。どうにかやってみます」

彼女を言ってくれたことに、おれは彼、柳田さんを信じることにした。


「ありがとう、俺の奢りじゃけん好きなもん頼んで」


「え、まじすか」


簡単に餌付けされたおれは、翌日の出勤からメンタイがよく写る場所にカメラを仕込み、タイミングを計りボイスレコーダを活用した。



自分はこれから探偵になれるのではないかと、本気で思うこともあったが

メンタイが今にも居場所を失うことを考えるといつも曇るモヤモヤした気持ちが少しだけ晴れていく




自分だけでは、こんなことをしようと踏み出せなかったな…


柳田さんには感謝だ

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