双子リーチの弟 (ページ5)

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入学式3 ページ5

そんな事が起こりながらも、入学式は始まった
新入生は鏡に呼ばれるまで新入生用の席に座ることになっており、どうしても在校生の間を新入生が通る必要がある。
そこで新入生の最初の洗礼として、先輩方から(カモりやすそうな新入生を探す)まじまじとした目線に耐えきる、というものがあった。

新入生が鏡の間に入る時、その雰囲気に気圧されると大体の確率で絡まれることになる為、
第一印象で「ビビりなやつ」という印象を与えてはいけないのだ。

それを知っている兄や近くに住んでいる兄貴分を持つ新入生は出来るだけ見栄を貼ろうとするのだが、入学式前日にシエロが入学すると知ったアズール達は「洗礼」について知らせることができなかった。
その「洗礼」の時に生まれたての子鹿の様に震えていた人魚3人はその後よく絡まれたのである。
シエロを溺愛している3人は、そんな状況を体験させたくなかった。そこで。

急に立ち上がったジェイドに生徒からの注目が集まる。
「いやぁ、今年僕達の可愛らしい弟が入学してくるなんて…時が経つのは早いですね。そう思いませんかフロイド」
独り言には大きすぎる声量で話すジェイドに、いつの間にか寮長、副寮長のいる席に現れたフロイドが応える。
「そうだねぇ。こ〜んなに小さな稚魚だったのにね。」
右手の親指と人差指で小ささを表そうとしているフロイド。流石にそれは小さすぎるのだが、誰もツッコむ勇気はない。
「僕らの大切な弟に手ェ出したり、冷やかすようなやつはぁ…締めちゃおっか！」

そんな悪魔の宣言により、シエロは新入生用の席に移動する際、全生徒の全力フル無視を食らうことになった。

そんな事は露知らず、シエロは
「まさか最初からこんな醜態を晒す羽目になるとは…」
落ち込んでいた。
確かに歩き方をきちんとマスターしている訳では無いが、見ていられないほどでは無いだろうに。目があった先輩方はすぐに顔を背けられたり、目線を逸らされた。そのせいでかなり浮いてしまったと思う。これでは同級生からも何かイジられてしまいそうだ。
そんな事を考えていると、デュースが遠慮がちにこちらに声をかけてきた。
「まぁ、第一印象が大切…ではあるが。これから挽回していけば大丈夫だろう。気を落とすなよ」
フォローしようとしているのは分かるが、逆に傷をえぐられた気がする。
それを考えても仕方がないので「そうだね」と言葉を返し、式に集中することにした。