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「兄ちゃんはいつも……自分より強いやつ相手でも逃げないし、仲間は絶対守るし…!あたし、そんな強くてかっけえ兄ちゃんが大好きで、憧れでっ……!」
勉強会(という名の女子会)をしている時も、吟子ちゃんはいつも楽しそうに難破くんのことを話していた。
こんなところがカッコイイとか、こんな強い人に勝ったことがあるとか、昔はこんなだったとか。彼について語る吟子ちゃんの目はいつもきらきらと輝いていたっけ。
言わば、難破くんは吟子ちゃんの光。追いかけ続けたその光が偽りだったと知って、もう何を信じていいか分からなくなったんだろう。
「吟子ちゃん、ごめんね……」
「っ…………なんで姉さんが謝んだよ」
「だってっ……知ってるのにずっと隠してから…」
わんわんと子供のように泣きじゃくる吟子ちゃんを抱き締めて、つんと鼻の奥が痛くなるのを必死で堪えた。胸元で、ぐす、と鼻をすする声が聞こえて。小さな身体は弱々しく震えている。
聞けばここ何日も、難破くんとは口をきいていないらしい。あんなに仲の良かった兄妹がこんなになってしまって、心がズキズキと痛む。
バレてしまったのならもう引き返せない。だから、わたしに今できる最善を尽くそうと。難破くんの秘密を、傷ついた吟子ちゃんを、みんなを助けたいと、そう思った。
「難破くんは、好きで嘘ついてたわけじゃないの。吟子ちゃんが…家族のみんなが大好きで、大切だから、嘘をつかざるを得なくなったって言うか…………」
上手く言えなくて口ごもる。けど、今は難しくても、時間をかけてでも、本当のことを話せばきっと分かってくれると思う。だから一生懸命言葉にして、吟子ちゃんに向き合う。
「今は受け入れるので精一杯だよね……こんな状況で無理に理解してほしいとは言わないよ。だから、落ち着いたらたくさん話そう。難破くんのことも、これからのことも」
もっと他に、吟子ちゃんの心を癒せる一言があったかもしれない。
でも、わたしなりの気持ちをめいっぱい込めたつもりだ。難破くんも吟子ちゃんも大切な友達。もう誰も、傷ついて欲しくはない。
「うん…………ありがとう姉さん」
涙でびしょ濡れの顔をぐいぐいと肩に押し付けて、吟子ちゃんは小さく頷いた。
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リュウ - 毎日更新ありがとうございます。毎日チェックしてます!これからも更新お願いします! (11月28日 2時) (レス) @page8 id: b6e7a94813 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まめこ。 | 作成日時:2023年11月26日 11時