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吟子ちゃんと弥生ちゃんが鉢合わせ、難破くんについてしつこく問い詰められた波乱の修羅場事件から数日が過ぎた。
……そして今、わたしの前には、暗い顔をした吟子ちゃんがいる。
「…………姉さん、知ってた?」
がつん。頭を思いっきり殴られたみたいな、鈍い衝撃が走る。
いつかバレるかもしれないと危機感は抱いていたけれど、その日はこんなにも早く来てしまったのだ。
「白百合の生徒会長やってる難破剛って……兄ちゃんと同姓同名の他人じゃないの?」
いつも底抜けに明るい吟子ちゃんがこんなに落ち込むなんて、彼女が受けた衝撃は計り知れなくて、申し訳なさでいっぱいになった。まるで魂が抜けたような正気のない目で、まっすぐにわたしを見つめてくる。
どうやら吟子ちゃんは、学校で難破くんの秘密を知ってしまったようだ。でもやっぱり信じたくない気持ちもあったらしく、わたしが小さく頷くと、ショックを受けたように目を見開いていた。
「でもね、吟子ちゃん……」
「じゃあほんとに兄ちゃん……あたしのこと…………っ、家族のこと騙してたの?」
「っ!」
「シャバいフリして白百合通って、でもあたしらには市松で頭張ってるとか嘘ついて……ずっとそんな…!」
声を詰まらせながらしゃっくりあげる吟子ちゃんの目から、とうとう涙が零れて。わたしまで泣きそうになるのをグッと堪えた。
どんな理由があれ、大好きなお兄ちゃんが自分たちを騙していたなんて、にわかには信じられないし、そもそも信じたくないはず。
……真実を知った時、吟子ちゃんはどんな気持ちだったんだろう。いつも難破くんのことを嬉しそうに話していたのを聞いていただけあって、そんか吟子ちゃんが気の毒で仕方なくて、気づけばわたしは震える彼女の手を握っていた。
「わたしもずっと黙ってたのは申し訳ないと思ってる。本当にごめんね」
「なんで……っ!」
「でもね、別に難破くんは吟子ちゃんを裏切ったわけではないんだよ」
言うだけ言ってから、何てことを言ったんだと後悔する。
……ああ、違う。これじゃない。
ただでさえ現実を受け入れられずにいっぱいいっぱいな吟子ちゃんなのに。更にこっちの事情だけ押し付けて理解しろだなんて、これ以上に酷な話はない。この時ばかりは、自分の口下手さを心底恨んだ。
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リュウ - 毎日更新ありがとうございます。毎日チェックしてます!これからも更新お願いします! (11月28日 2時) (レス) @page8 id: b6e7a94813 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まめこ。 | 作成日時:2023年11月26日 11時