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弥生ちゃんは難破くんしか見えてないし、他意はないってこともちゃんと理解してる。でも、気にするかしないかは別の話だ。元よりわたしは自己肯定感の低さがカンストしてるから、相手が可愛いと尚更不安になる。
「………………めんどくさくてごめんなさいね」
言わば直樹くんは、厄介に巻き込まれた被害者側。それに比べわたしは、彼が穏便に済ませようとしていたのに空気を読まず掻き乱したうえ、一丁前に嫉妬だなんて。吟子ちゃんはこんなわたしを「かわいい」と言ったけど、わたしはそうは思えない。
不貞腐れたセリフがぽろりと零れて。わたしは自分で思ってたより我儘なんだと、自分自身に腹が立った。
「それは俺が決めることだろ」
…………それでも彼は、変わらない優しさを向けてくれるのだ。
つい俯いたわたしの頬に手が伸びてきて、くい、と軽く持ち上げられる。
「別にめんどくせーとか思ってねえし。寧ろ嬉しい」
「う、うれしい、ですか」
「自覚してないかもだけどお前、ああやって分かりやすく口に出すことあんまねえから」
「そうですかね……？」
「どんだけ見てきたと思ってんだ」
その一言はわたしを安心させるには充分すぎて、ほっとすると同時に、強ばっていた全身の力が一気に抜けていった。
しかしその瞬間、いきなりぐいっと肩を抱き寄せられて。目を白黒させて見上げると、直樹くんはニヤリと口角を引き上げている。……あ、なんかやばい予感。
「…………で、何がダメなんだって？」
「あっ」
思い出すのは、直樹くんと、彼にくっついて離れない弥生ちゃんとの間に勢いに任せて飛び込んだ時のこと。
今思えばかなり大胆な行動に出ていたんだと思うけど、あの時はまさか弥生ちゃんと浮気？！なんて嫌な妄想ばかりが膨らんで、そんな気持ちが先行した。ぽぽぽ、と顔に熱が集まる。
「あ、あの、あれはですね……！」
「遠慮すんな、誰もいねえんだからよ」
「いやそのッ……！ここ普通にっ、ろ、路上ですし……！」
ふっと怪しく目を細めた彼との距離が縮まって、慌てて首を振る。けれどその一言で更に火に油を注いでしまったようで。
「家でならいいのか」
「へッ？！」
素っ頓狂な声が漏れる。それからぴたりとくっついて離れないまま、有無を言う暇もなく彼の家に引き摺りこまれたのは言うまでもない。
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2023年11月26日 11時
