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ミーン、ミーン、って蝉の鳴き声が日に日に大きくなっていく。照りつける日光はじりじりと肌を焼いて、日焼け止めが手放せない季節になりました。外は暑くてうんざりなので、夏休みはなるべく長くクーラーの効いた部屋に引きこもりたい所存です。
「……花火でも行くか」
「えっ、行きたいです」
と思ったら、バイクのキーを刺しながら直樹くんが呟いた。
さっきまで引きこもるとか言ってたけど前言撤回。涼しい夜なら出歩いても暑くないだろうし花火は好きだし。それに何より、直樹くんと花火なんて、行かない選択肢はない。
……まあでも、2年前に花火見ながらしばらく俺に近づくなって言われたのは一生忘れないと思いますけど。
「…………オイ伍代、姉崎」
「！」
その時、後ろから声をかけられて、びっくりして振り返る。
そこには猛さんがポケットに手を突っ込んで立っていた。おかげで浮かれていた気持ちは一転。胸騒ぎがして、じんわりと変な汗が滲む。
目をまるくさせるわたしを背中に隠すように、直樹くんが猛さんに向き合った。
「何すか今日は。アイツならもう帰ったけど」
「お前が市松の頭なんだよな」
……猛さんの言葉に、さーっと全身の血の気が引いて、指先からジワジワと冷たくなり始めた。うそ、なんで。
そして今の「お前が市松の頭なんだよな」って一言は、『疑問』というより『確信』に近かった。数日前、市松に来た時は上手く乗り切れたと思ったけど、どうやらどこかで勘づかれたみたいだ。
「お前が頭っつうことは……剛は市松の何なんだ」
「……何の話？」
「つうかそもそも剛は市松の生徒か？あァ？！」
「さっきから何言ってんすか？突然来てワケわかんねえこと……」
般若の如く顔を歪めて怒鳴る声にびくっと肩が跳ねる。バクバクと心拍数が上がって、呼吸が浅くなっていく。直樹くんが話題を逸らそうとしたけれど、猛さんはまるで言い逃れはさせないとばかりに、回した鍵をかちりと抜き取った。
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2023年11月26日 11時
