帰らせて下さい、切実に。IV【ナンバMG5】 (ページ12)

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#初恋は叶わないと言うけれどページ12

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それから少しして。難破くんの二重生活の中で特段大きな事件はなく、わたしたちは至って穏やかな日常を送っていた。

「はあ？パンツ？」

「最後に買うのが？」

「いや、ウチの母ちゃん良かれと思ってか知んねえけど、近所の『メンズショップ沢村』ってとこの面白パンツしか買ってくんねえから、こーゆー普通のパンツ持ってねえんだ」

そして今日は、修学旅行を明日に控えた難破くんのお買い物に付き合っています。いつかの春の日に、シャバい私服を選んで欲しいと頼み込まれてやってきた服屋さん。そんな思い出も、今となっては懐かしい。

「その面白パンツでいいじゃねえか」

「あァ？！修学旅行だぞ？！」

「だから？」

「修学旅行ったって別に誰がどんなパンツ履いてるとか気にならないと思いますけどね」

「分かってねえな姉崎お前……だから友達いねえんだぞ」

「ぐう…………！」

なんばくんのチクチクことばこうげき！
こうかはばつぐんだ！！
あねざきはたおれた！！

見事わたしの地雷を踏み抜いた難破くんのひとことは心臓辺りにクリティカルヒットして、わたしはその場に崩れ落ちた。

だって修学旅行で人のパンツ見るとかほんとに聞いたことないもん！わたしだけじゃないはずだもん！難破くんの意地悪！バーカバーカ！！……っていう小並感溢れる暴言の嵐は心の中に留めておいた。

「修学旅行っつったらホラ、こう……夜に男子と女子がこう…部屋を行ったり来たり、来たり行ったりとかよ……」

青い顔をするわたしに向き直り、「あのなぁ、」と律儀に説明してくれる難破くん。だけどその、モジモジしてどこか照れくさそうな態度に、何故か背筋がゾッとした。

これは…………

「それでよ！もし万が一藤田さんが俺らの部屋に遊びに来て…もし万が一俺のパンツを見るような状況に」

「なるかそんな状況 ! ! 」

……よく言った大丸くん！

ギャーギャー言い合うふたりに周りの冷たい視線が集まってくるけど、わたしは彼に金一封差し上げたいくらいの気持ちです。だって難破くんの言い分は、ただの片想い拗らせてる思春期のそれだから。大丸くんの言う通り、修学旅行で異性のパンツ見る状況なんて、どう考えてもなるわけがないんだから。傷ついて損しちゃった。

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