夜明けのいばら道�� ページ40
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準1級術師の棘は単独任務を許されており、今日もその任務中だった。どんな任務かは分からないが、買い物を続けようとする2人を止めようとしたことから、鶴瓶に関することだったと分かる。
野薔薇は、わざわざ警告してくれたのになんで聞かなかったんだろうと思う反面、いやでも語彙がおにぎりの具だけじゃ伝わらないわよと思う反面、やっぱりAを巻き込んでしまったのも申し訳なくて、ぐるぐる渦巻く感情を払うようにバンッと両頬を弾いた。
｢とりあえず脱出…………いや、その前にあのエセスカウトマン共を縛り付けるのが先かしら｣
｢しゃけ｣
｢物騒………………｣
｢しゃけってOK的な感じなの？｣
｢しゃけ｣
返事を貰ってもあまり分からず、合ってる？とAに尋ねると彼女はコクコクと頷いた。どうやらしゃけはOKで合っているらしい。分かりやすいのか分かりにくいのか訳が分からなくて、とにかく鶴瓶を縛り上げないと……と視線をそちらへ向けようとした野薔薇だったが、何かを見つけてハッとした。
｢────危ないッ！｣
その声に振り返ると、棘の背後に大きな影。
もう眠りから覚めたのか、そこには小泉がいて、棘に向かって拳を振り上げていた。棘は慌てて口元のファスナーを下ろすが、そうこうしているうちにもう拳は目と鼻の先だ。
｢どけっての！｣
すると、Aが動くより一瞬早く、野薔薇が弾かれるように駆け出した。棘を突き飛ばし、小泉の鳩尾に向けて肘鉄を放つ。避けられるか、反応されるか、どちらだって構わない。自分より大きい敵と戦うすべならパンダとの特訓で慣れている。何処からでもかかって来いとでも言いたげに放たれた肘は、その懐にずぶりと沈みこんだ。
｢………………え｣
｢が、…………ッ！｣
プロレスでもやっていそうな風格をしていながら、なんと小泉はあっさり倒れた。それに、腹を殴られそうになったら普通は腹筋に力を込めて痛みを和らげようとするもの。だが、小泉はそれをしなかった。自分が倒れるのが当たり前のような、身を守ることすらしなかった。
何かおかしい。何故こうも簡単に倒せてしまうのか。
…………まるでそれは、自らを囮にしたようだった。
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2021年2月26日 12時
