夜明けのいばら道�� ページ41
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殴った野薔薇はもちろん、見ていたAもその違和感を覚えた。…………その時、
｢────ゲホッ、ゴホ、ゲホッッ…………！｣
｢棘？！｣
真後ろで激しく咳き込む音。
そこには、喉を抑えて蹲る棘と、そんな棘を踏みつけにしてこちらを睨めつける鶴瓶がいた。棘の近くには、なにやら布のようなものが落ちている。
｢………………舐めた真似しやがって、ガキ共が｣
その顔に先程までの笑顔はない。見開かれ、敵意に満ちた双眸に、威嚇するように開かれた口から覗くスプリットタン。棘を踏みつける足に力を込めた鶴瓶は、女子2人をこれでもかとばかりに睨めつけた。
｢小泉は囮だよ。意識を失っても時限式で動くように俺が暗示をかけといたからよ……お陰で厄介な方潰せたわ。かけとくもんだな、保険｣
｢………………先輩に何したテメェ｣
｢狗巻家っつったら有名だからなぁ、高専にも呪言師がいることくらい分かってんだよ。対策しねえわけねえだろ。｣
床に落ちていた布を拾い上げ、鶴瓶は怪しく笑う。
その布は液体に濡れていて、鶴瓶曰く、催涙剤を含ませてあるらしい。声を紡ぐだけで相手を呪う呪言師だが、こういった物理攻撃に弱いんだと、同じ呪言師である鶴瓶は自慢げに言った。
しかし、何故ああも『触れたらやばいです』オーラをぷんぷん放つ布に触れたのか。Aがそう問おうとしたが、その声は鶴瓶の勝ち誇ったような高笑いにかき消された。
｢オメーのおかげだよ蕨美ちゃん。そりゃあ可愛い彼女に得体の知れない物体が襲いかかってたら考える前に庇うわな。いかにも彼女想いのバカで助かったよ｣
ニイと笑って言う鶴瓶。その瞬間、Aの中で何かがブチンと切れた。
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2021年2月26日 12時
