夜明けのいばら道�� ページ29
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顎に手を当て、少し考えてみる。
誰も知らない一面……と言っても、棘はどこであろうが誰の前であろうがAにべったりだし、Aだけにしかしない特別なことと言えば、時々名前を呼んでくれるくらいであった。まあそれもなかなかに周りに見せない意外な一面(?)なのだが、それを知ったところで棘がどんな人か分かる訳ではない。
｢……まあ、優しい子やね。棘は困ってる人とかおったらほっとかれへん
｢あんな感じ？｣
ほれ、と向こうを指さすA。首を傾げて野薔薇がその方向を見やると、少し離れた場所に見慣れた白髪がいるのが見えた。
｢あれ狗巻先輩？A先輩いつから気づいてたの｣
｢結構前から｣
｢なんで言わないのよ…………｣
｢任務中やろうし話しかけんほうがええかなあ思て…｣
てっきり野薔薇も気づいているものだと思っていた。
ごめんよ……とAが眉を下げる一方、棘は何やら外国人らしき人と話している。何とも珍しい組み合わせに、Aと野薔薇は顔を見合せた。
｢何話してんのかしら｣
｢さあ…………？｣
そもそも会話が成り立っているのかすら謎だが、タイミングよく青信号になった横断歩道を渡り、その会話に耳を傾けた。
｢I'd like to go to SHIBUYA109｣
｢しゃけしゃけ｣
｢Could you tell me Where I can get a taxi？｣
｢すじこ｣
｢Ah…which way should we go？｣
｢こんぶ｣
｢Ah…ワタシ、行キタイ、イチマルキュー。please OK？｣
｢しゃけ｣
｢Shake？｣
｢…………サーモン｣
｢Salmon？！why？！｣
｢おかか…………｣
｢わーお…………｣
｢全く成り立ってないじゃない…………｣
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2021年2月26日 12時
