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「お〜、松！」
松、と呼ばれた柴犬ちゃんは、物凄い勢いで尻尾を振って金髪に飛びつく。一方の金髪は、嬉しそうに松を抱きしめ、ひっくり返るお腹をわしゃしゃ、と撫でくりまわした。
え、いいな。わたしもそれやりたかった。
……ってそうじゃない！
「なんだお前、見てたのか！」
信じたくないけど……。この態度から見るに、金髪が松の飼い主なんだろう。逃げ出そうにも姿を見せてしまったし、もう後戻りはできないと、わたしは腹を括った。
そしてさっきから無言で見つめてくる伍代くんが怖いんですけどあの人何考えてるんですか？
「あっ…えっと、この子の飼い主さん？」
「おう！もしかして松を連れてきてくれたのか？」
「あ、連れてきたって言うか連れてこられたって言うか……ここまで走ってきたので何事かなぁと思って」
わたしが今話してる相手はヤンキーだ。めちゃくちゃ怖い。でもここでビビったら目付けられてパシりにされるんだもんね……。変なやつだって思われないように、なるべく穏便にこの場を去れるように。グッと足を踏み締めて余所行きの笑顔を貼り付けて、なんとか言葉を絞り出す。
「そうだったのか……実は昨日、家飛び出しちまって。家族みんなで心配してたんだよ！マジありがと！！」
「あっ、いえそんな！お礼なんて……松ちゃんが飼い主さんに会えて何よりです。では、わたしはこれで失礼します」
陰キャあるある��語頭に「あっ」か「えっ」を付けないと会話ができない。
でもなんか、意外とちゃんと受け答えできてるかも。いきなりメンチ切られて「てめえウチの松に何してくれてんだブチ殺すぞォ」的なこと言われるもんだと思ってたから、案外拍子抜けというか。
とりあえず、当たり障りのない言葉を並べて、「失礼します」を言いながらダッシュで走り去った。
後ろの方で「そういやあの制服…」なんて言葉が聞こえてきたけど、続きは聞かず、家までガンダで帰った。
「こ、こわっ……！ヤンキーこわ！」
バタン！とドアを閉めてしっかり施錠。布団に潜り込むと、堪えていた恐怖が一気に溢れてきて、ガタガタと身体が震える。
もう、このまま何もかも忘れて眠りにつこう。わたしは制服姿のまま、落ちるように目を閉じた。
…………そしてわたしは知らない。この出会いが、後にわたしの人生を大きく変えてしまうこと。
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みお(プロフ) - 面白くて一気読みしちゃいました！ (11月3日 2時) (
レス) @page39 id: 53a16e4f6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2023年11月1日 15時
