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「難破ァ」
「あ、ちょ」
まともに処置も終わってないのに、痛みに顔を歪めながらも起き上がる伍代くん。とりあえず手を貸してベンチに座らせると、肩で息をしながら難破くんに向き直った。
「今の生活続けたけりゃ……最上とやり合おうなんて思うんじゃねーぞ」
最上さん。わたしがさっき聞いた名前だ。
確か市松の2年生を束ねてるヤバい人で、あの伍代くんですら敵わないとかなんとか。てことは、さっきのデカ男と同じくらいかそれ以上の強さを持ってるってことだ。
“強い人”って認識はもちろんあったけど、今回の件でその強さの核心に近づいたというか。あんな恐ろしい人よりもっとヤバいのが存在していると思うとゾッとする。
「あ゛ー…いってぇ。姉崎もありがとな」
「いえそんな……ぁ、でもまだ傷塞がってないし病院行った方が、」
「わーってるわーってる」
経験上、その声のトーンで言う「わーってる」は10割分かってないんですよ。まぁこんな経験ないけど。
わたしの心配が届いているのかいないのか。言うだけ言うと、ふらふらになりながらベンチから立って歩いていく。わたしは慌ててその後ろを追う。後ろで難破くんもベンチから立ち上がった音がした。
「あ、の、難破くんもその怪我……」
「……俺は大丈夫。伍代のこと頼むわ」
「え」
よろよろ、ふらふら。ひょいっと片手を挙げた難破くんの背中は、ひどく小さく見えた。ああは言ったけど、罪悪感は彼の中にずっとあるんだろう。短い付き合いだし、初めて会った時は怖かった。でも今となっては胸を張って言える。難破くんは優しい人だ。その優しい笑顔が曇ったことが、気掛かりだった。
「気にすんな、お前はよく言ったよ」
「…………でも」
「さっきのお前の言葉が全てだろ。今は受け入れきれなくても、しばらくすれば必ず届く。あいつはアホだけどバカじゃねえ」
痛めた腕を庇いながら、伍代くんがフォローしてくれた。
しばらくすれば届く……か。
本当に、何事もないといいけど。
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みお(プロフ) - 面白くて一気読みしちゃいました！ (11月3日 2時) (
レス) @page39 id: 53a16e4f6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2023年11月1日 15時
