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帰ってろ、なんて言われても、何事もなかったように家に帰れる訳もなく。学校に行くのも怖いし。手持ち無沙汰になったわたしは、公園のブランコを漕ぎながら、ううううと呻き声をあげていた。
なんかずっとちっちゃい姉弟がガン見してくるんだけどほんとゴメン、お姉ちゃんは葛藤しているんだ。ここは何も見なかったことにして滑り台にでも行ってくれ。
(ど、どうしよう……もしかして割り込んでって喧嘩とかしないよね)
伍代くんは、難破くんを見逃した件でただでさえ白い目で見られてる。相手は同じ市松生。これ以上問題を起こそうものなら今度こそヤバいだろう。それに伍代くんの左腕は今折れてるんだ。そんな状態で喧嘩して悪化したら……って、わたしはバクバクうるさい心臓を必死で抑えた。
(どうしたら…………)
『帰ってろ』と言った伍代くんの姿がフラッシュバックする。あの表情に声音……十中八九、難破くんを助けに乗り込む気だ。
でも、どうやって?
それに、ここを上手く切り抜けたとしても、特攻服の正体が難破くんだってバレてるんだ。わたしたちが知らないところで殺されかけてもおかしくないのに。
「……!」
…その瞬間、わたしの頭に最悪の事態が浮かんだ。
「え、待って、もしかしてそんな事しないよね」
しかし、嫌な予感っていうのは思いついちゃったら次々に辻褄が合っていくもので。気のせいだと信じたくても、少しでも可能性があるならその事実は拭い去れない。
暫く岩のように固まって考え込んだわたしは、弾かれたようにブランコを飛び降り、駆け出していた。
……─────公園の、公衆トイレに向かって。
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みお(プロフ) - 面白くて一気読みしちゃいました! (11月3日 2時) (レス) @page39 id: 53a16e4f6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まめこ。 | 作成日時:2023年11月1日 15時