帰らせて下さい、切実に。【ナンバMG5】 (ページ20)

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わたしたち(ほぼ伍代くん)が選んだ服はなかなか評判が良かったようで、特にわたしチョイスのキャップ帽が好評だったらしい。

「ホントありがとな！」って難破くんが嬉しそうに報告してくれたので、あそこまで喜んでくれたら頑張って選んだ甲斐がある。そして、お礼がしたいという彼に連れられて、わたしたちは。

「ワンワンッ！」

目の前でブンブン尻尾を振って吠え散らかす例の柴犬ちゃん、松。
なんで松がここにいるか…いや、なんでわたしたちがここにいるかというと。

「まさか剛が女の子連れてくるなんて…！ゆっくりしてってな、別嬪さん」

「べっ……？！」

「ワン！！」

今度ご飯をご馳走してくれるとは言ってたけど、まさかお家にお邪魔させてもらうことになるなんて。

難破父に笑いかけられて、しゃきっと背筋が伸びる。友達の家に遊びに行ったことなんて、生まれてこの方15年、なんと一度もないんです。そのせいもあって、ソファーに浅く座ってスカートの裾を握りしめたわたしは、緊張しまくりで借りてきた猫みたいになっていた。あの時以来、すっかり懐いてぴったりくっついてくる松だけが唯一の癒しだ。

しかしそんな松も、大好きなお父さんが降りてきたことでそっちに走っていっちゃって、手持ち無沙汰になった両手が宙をふわふわ泳ぐ。

「そうだなぁ、剛が言ったんだもんな！『兄ちゃんの力借りないで市松でのし上がる』って！」

「「えっ」」

駆け寄ってきた松を抱き上げた難破父の一言に、伍代くんとふたり、声を揃えた。え？のし上がるどころか難波くんって白百合だよね？

どういうこと？という意を込めて見つめると、難破くんは慌てたようにわたしたちに近寄って、小声で言った。

「家族には市松に通ってることになってるんで……ヨロシク！」

「マジかよ」

(ええ……)

なんとびっくり。白百合に通ってることを家族にすら言ってなかったらしい。

……でもまあ確かに、これだけヤンキー一色の家族に「普通の高校生になりたいからヤンキー辞める」なんて言いにくいのは分からんでないかも。

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