## ページ34
-
壁に貼られたコピー用紙を見て、ぎょっとする。そこにはなんと『市松高校、陣内一久くん』『な、なんと150個！』と派手に記されていた。
けどわたしがびっくりしたのはそれだけじゃない。貼り紙に載ってる、余裕そうに笑ってダブルピースをする陣内さんの写真。その顔に見覚えがあったからだ。
「……ぁあああああああ！！」
「うわっ、びっくりした」
「どうした急に」
「うっ…売れないバンドマン！」
「は？何の話してんだよ」
「…この前会いました…………」
「「はァア？！？！」」
自分こんな声張れたんだ、と思うほどの大声がお腹から出た。
そしてそんな声に負けないくらいの大声で、今度は伍代くんと難破くんが声を揃えて叫んだ。お客さんたちの視線はもうお構いなしだった。
買い物帰りに声掛けられました！と続けると、「お前……」と眉根を寄せた伍代くんが声色を低くさせて言う。
「陣内には関わんなってあんだけ言ったろ」
「だってまさかあれが陣内さんだとは思わなくて……」
「まー伍代、怒んなよ。こうやって五体満足で帰ってきてんだからいいじゃねえか」
「……でもよ、」
「姉崎が心配なのは分かってる。だけど今はおさめろ」
不良相手にブチ切れて暴れる伍代くんなら今までに何度も見てきたけど、それを自分に向けられたのは初めてで。ひゅっと息を飲む。
凍りついていると、難破くんが上手く間に入って伍代くんを宥めてくれた。
たまにとんでもない無茶振りしてきて怖いけど、いざって時はちゃんと助け舟を出してくれる。そしてさりげなく話の舵を取って、安全な話題へ方向転換してくれた。
「まァ、なんだ……餃子150個がマジなのは分かったけどよ、俺は喧嘩の伝説を聞きてえんだ」
「1番やべえのは…………『スケボー事件』かな」
難破くんのおかげで、伍代くんはいつもの雰囲気に戻ったみたいでほっとする。そして、彼が話し始めた『スケボー事件』の概要は、こうだ。
陣内さんが彼女とデートしてる最中、ギャング同士のドンパチが起きた。そのうちひとりが威嚇で投げたスケボーが、近くにいた彼女を直撃。怒った陣内さんがその場にいたギャング2組を壊滅させた……という。
「相当やるな…」
「あばばばばばば……」
「だから言ったろ。陣内が考えてる事はサッパリわかんねえ。気つけろや」
陣内さん…思ってた以上に怖い人。
……やっぱりあの時、エコバッグ捨ててでも逃げるべきだったかも。
-
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 61人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はるちよ - とても面白くて毎日読み返しています！リクエスト良いですか？！今の五代くんの話が終わったら寂しくなってしまうので、もしまめこさん さえよえれば、五代くんの話を他にも書いて欲しいです。 (11月10日 18時) (
レス) id: b6e7a94813 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まめこ。
| 作成日時：2023年11月3日 12時
