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｢〜♪｣
宿儺の器こと虎杖悠仁は、今日の特訓を終えて外を歩いていた。他の生徒に会わないように、と五条からよォく聞かされている……のだが。
｢お、誰かいる｣
薄らと空が暗くなってきているにも拘わらず、1人で歩く誰かの後ろ姿が見えた。顔は見えないが髪は長いし、袖の部分が広い和風の制服は女物。女の子がこんな時間に1人で何してるんだろう、と思わず虎杖は声をかけた。
｢あの、何してんすか？｣
｢？！？！｣
その後ろ姿に見覚えは無いので恐らく2年生か3年生。
ちょん、と肩をつつけば、その肩は勢いよく跳ねた。
｢あ、え、っと…………｣
｢？｣
暗がりなので分からなかったのだが、よくよく見てみるとその顔は泣き腫らしていて、手にはコンビニのビニール袋を持っている。ますます謎で、虎杖は訝しげに首を傾げた。
｢わらび餅………………｣
｢わらび餅？｣
｢置いてたやつ……友達…………に食べられたから、買いに行ってて｣
｢あー、それでコンビニの袋持ってたんすね！すんません何か。急に声かけちゃって｣
｢ううん、気にしてへんから別にええよ｣
わらび餅を食べた友達はパンダで、泣いていたのも食べられたからであるのだが、その事情を知らない虎杖は納得したのかしていないのか、なるほどねと相槌を打った。
｢ところで先輩は2年生？3年生？｣
｢2年生｣
｢そっか、じゃあ驚かせちゃったお詫びっていうのもなんだけど、2年の寮まで送りますよ｣
｢え？でも……｣
｢気にしなくて全然いいっすよ！夜道を女の子が1人っていうのも危ないし…………って、ここ高専の敷地内だから何もないんだろうけど｣
はは、と笑う虎杖を、Aは初めこそは警戒していたが、話しているうちにその警戒は解けていた。
｢先輩、わらび餅好きなんすか？｣
｢うん。好き。コンビニ行ったら期間限定できな粉増量中やって、やから2つ買うてん｣
｢めちゃめちゃ好きじゃないですか！｣
｢そやねんそやねん。……あ、せっかくやし1個あげるわ｣
ビニール袋からわらび餅を1パック取り出して虎杖に差し出す。｢いいんですか？｣と聞いてくるのに黙って頷けば、虎杖はニカッと笑ってそれを受け取った。
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2021年2月12日 12時
