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ぴちゃ、ぴちゃ、と不気味な水音が響く空き家。
無人のはずのそこに居座る影は、唇をニイッと引き上げて、それはそれは気持ちの悪い笑みを浮かべた。
彼らはこの空き家に巣食う呪霊。
そこに居るのは、先刻から涎を垂らして笑っている一際大きな個体を含めて3体で、大きいやつにくっつくようにゲコゲコ音を発している小さな呪霊は子供のようだ。
そして、大きな呪霊…(この先は母親呪霊と呼ぶ)がニヤニヤと不気味に笑いながら見詰める暗がりの中には、2つの人影があった。
｢ひッ……………3つもおるやん、きっしょッ｣
｢くっつくんじゃねえ｣
腰に手を当てて仁王立ちする真希と、そんな真希にガタガタ震えながら抱きつくAだ。そして母親呪霊の方は怯えきっているAをロックオンしたのか、剥き出しの目玉をずっとAに向けている。正直言うとめちゃめちゃ怖いし気持ち悪い。
───が、ﾝか゛わ゛い゛い゛ね゛ェエエエエッ
不意に、母親呪霊がダンッと床を蹴って駆けだした。
｢嫌あああああああッッッ！！！｣
だらだらと涎を垂らしながら襲いかかってくる母親呪霊から全速力で逃げる。50m走のタイムは8秒後半だったはずだが、この時は多分軽く2、3秒代レベルのスピードで走っていたと思う。それだけ逃げるのに本気だったのだ。
｢馬鹿、そっちは…………！｣
｢さっきからバカバカうるっさいなァもおおおおッ！｣
真希の制止の声もまるで届かず、涙目になりながら一目散に廊下を走り、目の前の曲がり角を右折すると、そこにも呪霊。
｢ぎッ─────｣
刹那、耳を劈くような叫び声が響き渡り、思わず耳を塞いだ真希は困ったように眉根を寄せた。
｢うわぁああああん梅ぇぇぇぇッ！｣
わんわん泣き喚くAの懐から重力を無視して飛び出した
(ッたく、何でこうなった？！)
それは、遡ること2時間ほど前。
高校生活2日目の座学を終えて昼休みに入った時──。
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2021年3月4日 15時
