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｢呪いのせいか？『善人です』ってセルフプロデュースが顔に出てるぞ。気持ち悪ィ｣
守ってもらっている側のくせにどうしてそんな被害者面をするんだと真希は言う。何の目的もなく生きていけるほど甘い場所じゃない、と。春にAも言われた事だ。そして、そう言われた時のAと同じように、憂太も言葉をなくしていた。
｢真希、気持ちはわかるけどそれぐらいにしといたり｣
｢おかか！｣
｢わーったよ、うるせえな｣
Aと棘が咎めるように言うと、真希は頭を掻きながらそっぽを向いて舌打ちをする。そんな彼女の言葉に俯く憂太の肩に、ぽんと大きな手が乗った。
｢すまんな。アイツは少々他人を理解した気になるところがある｣
｢いや、いいよ。………ほんとのことだから｣
俯いたまま言う憂太の声は酷く哀しそうで、Aはほんの少し気の毒に思えた。過去に結婚の約束をした、死んだ幼馴染の呪いを抱えている……なんて言ってみるのは簡単だけど、その荷はAには計り知れないほど重たい。
(この子が何したっていうんやろ)
世界はあまりに残酷で、惨い。呪いなんて物騒なものがなければAは何にも怯えず過ごせていたかもしれないし、目の前の気弱な少年も、今頃幸せに暮らしていただろう。どうせなら生きている価値のないような人間を選べばいいのに、神様は善人の肩にばかり重荷を乗せようとする。
(でもやっぱ怖い。仲良くすんのは無理そう)
上手くやっていけるかなぁと不安になったAを残し、時計の針だけが時を刻む。どうか無事に終わりますようにと今更願ったって遅いのに、駆け足で過ぎていく時間の流れに身を任せることしかできなかった。
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2021年3月4日 15時
