第3章 : 乙骨憂太 ページ36
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それから時は流れて。季節は秋になった。
すっかり色の変わった葉の落ちる道を駆け抜けるAは、レジ袋を大事そうに抱えて暖かい教室に飛び込んだ。
「ひええ、さむさむ」
「お前それで寒いって冬どうやって乗り切んだよ」
「それは冬んなってから考えたらええ」
ポニーテールに結んだ髪は幾らか伸び、わらび餅ばかり食べていた所為もあって頬のもちもち感が増したようにも感じる。そしてあれから1番大きな変化といえば、準2級術師になったということだろうか。
「ていうかA聞いたか?今日来る転入生の話」
「ん、ゴホッ、ゲホッ……!」
「あ、むせた」
パンダの問いかけに盛大にわらび餅を喉に詰まらせたAは、棘が水を差し出してくるのを受け取り、顔を上げた。
「同級生4人をロッカーに詰め込んだって子やろ?」
「そーそー」
「そんなん絶対ヤンキーやん。私ほんま嫌やで目ェつけられたりすんの」
更に、詰められた同級生は死んでいないとかいうから恐ろしい。きっと痛かったし苦しかったろう。その苦痛を味わうくらいなら死んでしまった方がマシだったのではないかとAは思ってしまった。
相変わらず怖がりなAに、「生意気ならシメるまでだ」と吐き捨てて余計怖がらせた真希は高々と足を組み、肘をついて教室の扉を見やる。誰か来たようだ。
「ハイおはよう!
今日は転入生を紹介しやす!テンション上げて皆!」
スッパァン!とドアを盛大に開け放って登場したのは担任の五条。お菓子しまってね、と言われる前にレジ袋を鞄に突っ込んだAは、びくびく怯えながら肩を竦めた。
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作者名:まめこ。 | 作成日時:2021年3月4日 15時