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空き家に潜んでいた呪霊は全部合わせて5体。
複数いたがどれも弱いものばかりで、10分もすればその全てが無事に祓われた。しかしAは相変わらず泣いていて、帰る頃になっても目の周りの腫れは収まらなかった。
｢昼飯食い損ねちまったな、今度悟に奢らせようぜ｣
｢………………うん、｣
｢初任務にしては割と上手いこといったよな｣
｢………………そやね｣
｢お前はいつまでそう泣いてるつもりなんだよ｣
｢………………｣
｢……なんか言えや｣
ぼそぼそと返事をしていたAの声が途切れ、先を歩いていた真希は徐にその足を止める。振り返れば、ぎゅっとスカートを握りしめて俯くAがぽつりと言った。
｢真希は、怖くないん…………？｣
蚊の鳴くような小さな声にありったけの聴力を集中させてみれば、彼女はそんな事を言い出す。｢怖いわけねえだろ｣と返せば、Aは｢やっぱりそうやんな｣と更に俯いた。
｢逆に聞くけど何でそんなに怖えんだよ｣
｢だ、って…………｣
｢いつものあれか？“怖いものは怖い”ってやつ｣
幾らか怒りを孕んだその声に、言い返すこともできずに小さく頷く。真希は呆れたようにため息をつくが、Aだって頑張っているのだ。それでも怖いものは怖いし苦手なものは苦手だ。みんながみんな苦手を克服できるとは限らないのだから仕方ないだろうと、そう言おうとしたAだけど、その一言は言えなかった。だってそれは、予想外の言葉が真希の口から飛び出したから。
｢……………………じゃあ呪術師やめれば？｣
｢え？｣
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2021年3月4日 15時
