56話 : 凍てつく瞳は一体何を映すのか ページ10
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電車の後部に向けて走るAは、すれ違う乗客たちに能力をかけていた。全員初対面で関わりが薄いのでその人に対する想いも薄いが、次また爆発した時のダメージを削減するくらいはできる。
「あの依頼人さん、高そうな服着てましたからねぇ。
きっとお金持ちです。折角だしついでに殴られた治療費と慰謝料も貰っちゃいましょ」
「時々ぶっ飛んでるよねAさん…………」
こんな呑気な会話を交わしているが、爆弾から逃げ惑う人達の悲鳴や足音が大きくなればなるほど、その顔色は悪くなる一方だ。
(目的は爆弾の撤去……でもきっと、その周りにも誰かしら敵がいるハズ。そうなれば戦は避けられない)
もしその戦いに乗客が巻き込まれたら…………
敵に気を取られているうちに爆弾が爆発したら……
そんな小さな不安は他の感情をも飲み込み、とうとう大きな心の蟠りになった。それでも、敵の元へ単身乗り込んだ与謝野に迷惑をかけないためにも、何としてでも爆弾を止めなければ。
するとそこへ、シャンと鈴の鳴る音が響いた。
「あの子…………!」
見えたのは、赤い着物のあの少女。
彼女はAと敦の傍をすり抜け、着物の袖を翻して真っ直ぐ電車の後部へ駆けていく。その方向には、爆弾があるのに。
「君!危ないよ!そっちには爆弾が─────」
敦の制止の声に、少女はぴたりと足を止める。
そして片手に持った携帯電話に耳を押し当て、ゆっくりとこちらを振り向いた。このまま行けば、マフィアの標的にされてしまう……が、
━━━━━━ゴスッッ!!
「?!」
容赦ない一撃が敦を後方へと吹き飛ばした。
そして少女の持つ携帯から、声が聞こえてくる。
『邪魔者は殺せ。━━━━━“夜叉白雪”!』
その声と共に、少女の背後の空間が揺らめく。
「なんて事………………」
Aが目を見張る先には、大きな刀を振りかざす、白い着物に身を包んだ夜叉の姿があった。
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57話 : 怒りも哀しみもごちゃ混ぜに→←55話 : 人を殺して死ねよとて
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草華 - お話とても面白かったです😆続き楽しみにしています❗頑張ってください☺️ (2023年2月25日 20時) (レス) @page47 id: dcb6064af8 (このIDを非表示/違反報告)
睡蓮。(プロフ) - 夢主ちゃんの恋愛好きなキャラが凄い好きです!!更新頑張ってください!応援してます!! (2021年8月5日 23時) (レス) id: ccbe99882f (このIDを非表示/違反報告)
まめこ。(プロフ) - 無気力に自信が有る人さん» コメントありがとうございます!私はアニメ勢で最近漫画を集め始めたんですが、敦と乱歩さん推しです^^* (2021年7月25日 11時) (レス) id: 4740a5bcfa (このIDを非表示/違反報告)
無気力に自信が有る人 - 凄く面白いであります!私、文ストの中で敦が最推しです!(アニメと漫画どっちもです!)まめこ。さんは誰推しですか?この小説書いてるってことは敦なんですか?更新頑張ってください! (2021年7月24日 21時) (レス) id: 19b8beddf0 (このIDを非表示/違反報告)
まめこ。(プロフ) - がびさん» コメントありがとうございます!私あんま歌い手さん詳しくなくて同じにしたつもりはなかったのですが…そういう歌詞があるんですね!また聞いてみます^^* (2021年6月8日 12時) (レス) id: 4740a5bcfa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まめこ。 | 作成日時:2021年1月21日 20時