愛する貴方に真紅の薔薇を。２【文スト】

53話 : 夜は何かが犇めくから ページ7

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沈んだ表情をする敦とAとは対照的に、与謝野はふっと笑って言った。


｢そこまで気にするこたァないよ。……ところで、
アンタ、マフィアに足を喰いちぎられたそうじゃないか｣

｢え、そうなんですか？！｣

｢ああ、大丈夫だよ。能力で元通りになったから｣


それはAがやられて直後のこと。
息も絶え絶えになりながら意識を取り戻した時、既に敦は虎化していたので、まさか足を千切られていたなんて思いもしなかった。そして、｢ふゥん｣と興味なさげに呟いた与謝野は、次の瞬間


｢綺麗なモンだねェ｣

｢ぎゃい？！｣

｢よ、与謝野先生何をっ……………？！｣


ズボンを捲りあげ、すっかり元通りになった敦の右足を露わにする。ぎょっとしたような2人など気にもとめず、彼女はその白肌をつーっと指先でなぞった。


｢あ、あの、何か問題でも？｣

｢別に。妾(アタシ)が治療できなくて残念だって話さ。
……………………でも、次はないよ｣

｢え？｣

｢前回はうちに正面から突っ込ンで自滅したけど、元来マフィアってのは奇襲夜討が本分だ。夜道にゃ気をつけるんだね｣


マフィア達の狙いは敦。何時どこで襲ってきても可笑しくない状況だ。白昼堂々と事務所を襲ってきた前とは違い、夜道を1人のところを襲われたら……と考えるだけでも寒気がする。それにA自身、夜道にあまり良い思い出はない。


｢1人のときはちゃんと周りを見て、異変があったらすぐに呼んでください？何処にいても助けに参りま｣

『あァーー。こちら車両室ゥ』

｢ん？｣


Aの言葉を遮るように響いた車内アナウンス。
今はただただ平凡なアナウンスなのに、Aは嫌な予感がして堪らなかった。









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