愛する貴方に真紅の薔薇を。２【文スト】

52話 : 張られた頬の痛みより ページ6

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ウォウッ？！と情けない声をあげ、檸檬に躓いて盛大に転んだ男性に、Aは慌てて駆け寄った。


｢っごめんなさいごめんなさい、大丈夫ですか？｣

｢なんてことしてくれたんだ！｣

｢！｣


刹那、バチン！と乾いた音が響く。
怒り狂った男が、Aの頬に平手打ちをしたのだ。


｢欧州デザイナーの特別誂えだぞ！女の癖に儂を誰だと思ってる！貴様らの勤め先など電話一本で潰して──｣


痛いと喚くわけでも泣くわけでも、張られた頬を抑えるでもなく、Aは俯いてぎゅっと耐えるように目を閉じている。


｢女の癖に？｣


そこで、2人の間に割って入ったのは与謝野だ。
座り込むAを指さすその男の人差し指を与謝野がそっと掴んだその直後、メリメリと人体から出るとは思えない音が聞こえてきた。


｢…………そいつは恐れ入ったねェ。女らしくアンタの貧相な▒▒▒を踏み潰して▒▒▒してやろうか？｣


最早放送禁止レベルの暴言を吐いた与謝野に男は言葉をなくし、足をもたつかせながら走り去って行った。

与謝野はAと敦の方を振り返り、何も言わずクイッと電車の方を示す。乗れという合図だろう。
そのまま電車に乗り込んだAたちは、3人横並びになって座った。


｢ごめんねAさん、ほっぺた大丈夫？｣

｢いえ、このくらい慣れっこですから。こちらこそちゃんと前を見てなくてごめんなさい｣


思い切り張られたAの右頬はじんわりと赤くなっていて痛々しい。手形こそつかなかったが、女の顔に容赦ない平手打ちを見舞うなど、相手もなかなかである。









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