愛する貴方に真紅の薔薇を。２【文スト】

85話 : 啀み合う黒と白のロンド ページ39

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一方、船の中では。


｢鏡花、其れがお前の選んだ道か｣


首を絞めあげられた鏡花は遠のく意識の中、確かに死を錯覚していた。


｢是迄の労に報い、楽に殺してやろう｣


ぎゅるりと外套が形を変え始めた。
鋭利なその切っ先が鏡花の首元に向き、勢いよく突っ込んでくる。もうダメだと目を瞑った鏡花だった
────────が、


｢！｣


ドォン！という爆発音がしたと同時に、芥川がその場に膝をつく。


(これは……………！)


其れは少し前に感じた感覚。痺れるような痛みに襲われ、指先から感覚が消えていく。それは、


｢────────その子にこれ以上手を出すな｣


声のする方を振り返る。
そこに見えたのは、浅い呼吸を繰り返す鏡花を抱えたAと、そんな2人を庇うように立つ敦の姿。
いつもは柔らかく据わったAの瞳が、明確な殺意の光を宿している。


｢Aさんは鏡花ちゃんをお願い｣

｢任せてください｣


鏡花を背負い、Aが船の外へと駆けていく。
残された敦は真っ直ぐに芥川を見詰め、口を開いた。


｢勝負だ、芥川｣

｢今と成っては奇異なる事だが、貴様とは孰れこう成る気がしていた｣


ぴりぴりと襲う痺れに耐えながら起き上がった芥川も、負けじと敦を睨み返す。真っ黒い獣と白虎。
静かに睨み合い、ぶつかるその視線は、誰も近づけないような、そんな圧を放っていた。


｢懸賞金を取りっぱぐれるぞ｣

｢気にするな。最早貴様を生かして渡す気などない｣

｢お前は許せない｣

｢僕(やつがれ)とて同じこと｣


凄まじい一撃が、空中でぶつかった。









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