愛する貴方に真紅の薔薇を。２【文スト】

57話 : 怒りも哀しみもごちゃ混ぜに ページ11

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｢敦さん、平気ですか？！｣

｢大、丈夫っ…………少し痛いだけだから……｣


がくりと膝をつく敦に駆け寄ると、勢いよくやられた腹部からぽたぽたと血が滴っていた。Aの能力が間に合ったのでダメージが削減され、致命傷ではないが、彼は痛みにぐっと顔を歪めている。


｢マフィアにはあんな小さな子が…………｣


敦を庇うように立ち、懐から取り出した短刀を構えるAの手は震えている。しかし少女は、もう何もかもどうでもいいかのような、そんな目をしてAを睨めつけていた。


(敵が出たら相手に動く隙を与えず能力で行動不能にする算段だった…………くそ)


Aに、幼い少女を容易に傷つけられるほどの度胸はない。あの子が飛び出してきた時、敵かもしれないと少しも疑わなかった。その結果、敦がやられてしまった。


(でも………………)


ギラリと短刀の白刃が光る。


｢敦さんは大事なお友達(・・・)。
…………………………ここまで傷つけられて、黙ってはいられませんね｣


相手が幼女であっても、それは変わらない。
大事な人を傷つけられた怒りが、Aの心に溢れ出す。
それと同時に、夜叉白雪が動いた。


(勝てる見込みは薄い……けど、負ける気は一切ない！)


キイン！と刀がぶつかる音がする。
夜叉が持つ大きな刀に対するAは脆い短刀。
もちろんその力の差は歴然で、暫く踏ん張ったAだったが、呆気なく押し負けてしまう。
何度も起き上がって猛進するが、その間合いに入ることすら許されない。そしてとうとう短刀の刃が折れ、Aは丸腰になってしまった。


(強い………………！)









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