第六話 T side ページ6
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自分の命を助けてくれた恩人に
”助けてくれなくて良かった“なんて口が裂けても言えないし、むしろそんな思考を持っている自分が恐ろしいとすら思う。
…けれどやっぱり助けてほしくなかった。
あのまま海の底に沈んでいれば俺は今頃…
『ねえ、名前なんていうの?』
しばらくぼーっとしていたのかお兄さんの声で我に返る。
これ以上関わるつもりもなかったけれど、このお兄さんになら名前ぐらい知られても大丈夫だと名を名乗れば、
『じゃあたまって呼んでい?』
と柔らかい笑みを浮かべながらそう聞いてきた。
「えっと、これ以上お世話になるのは迷惑だと思うので…俺はこれで失礼します。」
改めてお兄さんに頭を下げ、ドアノブに手をかけようとすると不意に掴まれた腕。
『こんな事聞くのもなんだけど、これから行く宛はあるの?そんな状態で。』
…ごもっともだ。
自ら里親の元から離れた俺には、数少ない友達も遠く離れた街で暮らしている。
手ぶらで出てきてしまった俺に選択肢などは残されていない。
「ない、です…けど、頑張って探します…」
さすがにこれ以上お世話になるのは申し訳ないし、
初対面の相手にこれ以上迷惑はかけられない。
緩く掴まれた腕を解きドアの方へ行こうと振り返ろうとした途端、呟かれた言葉は…
『良かったら俺と一緒に暮らさない?』
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作者名:みやたま | 作成日時:2021年10月16日 0時