第二十三話 T side ページ23
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俺には俊くんがどうしてここまで怒っているのか理解出来なかった。確かに俺の命を助けてくれた恩人ではあるが、友達でもなければ恋人でもないわけで。
それでもいつものあの柔らかい笑顔はどこかへ消え、炎で焼き付いた目で俺を見下ろす俊くんに背筋がぞくりと凍る感覚がした。
しばらくして俊くんは俺から離れていくと、真剣な表情で見つめてくる。その瞳に吸い込まれていくように見つめ返せば頬を両手で挟まれた。
『実はね、俺たまの事高校生の時から…ずっと好きだったんだ。勿論話した事もないからたまが俺の事知らないのは当然なんだけど。俺はたまの事ずっと陰で見てたんだ。いつも見る度消えてしまいそうなほど儚くて、それでいて綺麗で。いつかたまにこの気持ちを伝えられたらって思いながら9年経って、こうやってまた再会出来て本当に嬉しかったんだよ?』
そう言って俊くんは俺を抱き締めた。俺よりもたくましいその背中に腕を回す。
俺にとっては初対面だったけれど、俊くんは高校生の時からずっと俺の事を思い続けてくれていたみたいで、恋愛経験もない俺は何と声をかければいいのか分からない。誰かに恋心を抱かれた事なんて23年間生きてきた中で、俊くん以外誰一人居なかったから。
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作者名:みやたま | 作成日時:2021年10月16日 0時