114話 ページ22
「キミは相変わらずふわふわと空を渡る雲のようダ。
奇想天外…とまでは言わないけド、このボクがここまで翻弄されるのは意外だネ。
まァ、それは構わないんだけド…
ボクのテルトリーに勝手に入るのはやめて欲しいかナ。」
『………。』
水晶の手入れをしながら本棚を漁る蓮を見る
赤い髪に白いメッシュの彼はハァとため息をつくと、手に持っていたものをゆっくり下す
「まったく…鍵をかけていたはずなんだけどネ…
キミにはあまり意味がなかったみたいダ。」
『……これ……借りて…も…いい…？』
「どうゾ。
元々、それはボクのじゃなくて図書室にあったものだからネ。
好きなだけ持っていくと良いヨ。
とはいえ…不法侵入は見逃せないナ。
ちょっとボクの実験に付き合ってヨ。レン。」
制服のブレザーを脱ぎ、白衣に着替えた
蓮を手招きし、指で椅子を指す
蓮は大人しく彼に従い、椅子に座った
はじめるヨ
そう言って彼は微笑んだ
「簡単ダ。
目を瞑り、ゆっくり深呼吸をするんダ。
…そのまま背もたれに寄りかかル。
そう、リラックスしていてくれれば良イ。」
彼はそう言いながら部屋の電気を消した
真っ暗な闇から一つの光が灯される
フラスコの中でゆらゆらを光るそれは
ポンッという音を立てて呼吸しているようだった
すると別の試験管を手にすると、
その中にある液体をフラスコの中に注いだ
元は緑の光を放っていたそれだが、青の液体が入ると
たちまち赤く変色した
瞬間、
キラキラと星のような輝きを放ってフラスコから気体のようなものがゆらゆらと飛び出してきた
「ウン、準備は整ったネ。
さァレン。
キミに魔法をかけよウ。」
トン…と蓮のおでこに指を置いた
“安心して
人は君が思っているほど純粋ではない
そしてそれは君も同じだ
怖がる必要はない”
それは言葉なのか
はたまた言霊か
パチッと電気が付いた
しかし、彼の指は未だに蓮に触れている
「…ウン、どうかナ。
なかなかの出来だとは思うんだけド。
…ン？…レン？」
反応がない
彼が蓮の肩を揺らすとカクンと首が横に座った
「…もしかして…寝てル？」
よく見てみると
スヤスヤと静かに寝息を立てていた
「…ハァ、
また失敗だネ。」
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作者名：アニット9 | 作成日時：2022年12月25日 21時
