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「…もう、放置しておいてくれ。」
曦臣「、一人にさせないと、羅漢と約束しました」
その名前を聞くたび彼女の手には力が入る。
「、羅漢はっ、もう死んだだろ！」
私の目と合うなり、目をそらして俯いた。
「…貴方に怒鳴るだなんて、どうかしてる。
すまない、本当に…」
すべての種をまいたのは私なのに、
そう、物語を始めたのは私。
曦臣「…貴方が、悪いわけじゃない。」
「…復讐の道が、間違えているのかいないのか、
そんなことは、…どちらでもよかった、
__そう…どうでも良かったはずなんだ」
何度だって、止められた。
だけど誰が何を言おうと、己が決めた道を進んだ。
善悪だけでは判断できないことのほうが多く、
この世に確かにあるモノの方が遥かに少ない。
だから、自尊心を優先した。
己の価値観を信じた。
「これが、私の行く末なのか、…」
待っていたのは大きな失望と絶望だった。
すべて壊してしまった。
侘びしい家で、ひっそりと暮らしたあの記憶が私の人生の黄金期に違いない。
親らしいことは何もしなかった母、
熱心に支えてくれた羅漢…
無邪気に走り回っていた幼き私、
___私は、何を望んでいたのだろうか、
夢を見た、
体が重くて、熱を出した幼き日。
朦朧とした記憶が鮮明に呼び起こされた。
白い肌に、泉のように綺麗な瞳を持つ母が、
熱にうなされる我が子を寝かしつけていた。
憂く、儚い
優しい眼差し、
＿苦しいはずなのに、その時間が永遠に続けば良いと願った。
目覚めたとき、一滴の涙が流れていた。
「母上…、」
今になって呼び起こされた記憶に、心が動いた。
訛った体を起き上がらせ、寝台の横に置かれた昨日の夜食を貪った。
涙を拭いながら、食べた。
味の薄い、精進料理は不味いものであった。
だが、食べねば…
＿生きねばならない、
怒りを燃やしてでも、母の真相を突き止めると決めたのだから。
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作者名：染子 | 作成日時：2022年1月17日 14時
