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胸騒ぎがして、眠れぬ夜だった。
夜風に当たり、心身を落ち着かせていると何者かの足音が聞こえた。
羅漢「、沢蕪君」
曦臣「…羅漢殿ではないですか。」
息を切らして、現れた姿に驚いた。
羅漢「どうか、A様をお助けください。」
勢いよく頭を下げたその姿に、胸騒ぎは確信に変わった。
すぐさま、剣を持ち出し外に出る。
曦臣「何故、朱の若様お一人で向かったのですか」
時間がないことから飛びながら、話をする。
羅漢「、あの家で戦えるものはA様のみです。
あの怨霊が朱家に出没したのにも関わらず、
何もできなかったことを知られるのを皆が恐れているからです。」
知られれば、朱家は更に落ちぶれることになる。
それに、これは誰かの思惑が絡まっている。
羅漢「…、先を急ぎましょう。
全てはA様を見つけたらお話すると誓います」
その口調に焦りが見える。
曦臣はそれに了承した。
あのときと同じだった、無数の怨霊が私を好意的に狙ってきた。
誰かが私を陥れるための罠だということは、わかっていた。
技を繰り出して、倒していくがきりがない。
「はぁ、はあ、」
私の霊力が尽きるのを狙っているのだろうか。
単純に倒すだけでは、相手の思うつぼだ。
怨霊が意図的に操られているのなら、その元を潰すことだ。
これだけの怨霊がどうして成り立ったのか、知ることができればいい。
術を発動させ、怨霊の出どころを探った。
その先にあったのは、暗い谷だった。
足を進めるのを、ためらう。
その先に何があるのか、
知らない限り、進むことなどできない。
暗い暗い谷へと落ちていった。
たとえそれが、どんな結末を引き起こそうとも。
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作者名：染子 | 作成日時：2022年1月17日 14時
