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先程まで、人がいないかのような静けさを保つていた家が騒ぎ出した。
みなが、動揺していた。
コソコソと集まり話し合う者や、
どうなっているんだと怒鳴り散らす者、
想定外を装っているだけの者も、この中にいる。
__いち早く、A様の元へ行かなくては。
当主の座が空いた今、実権を握るものがいなくなり争いは苛烈を極めることになる。
羅漢の頭によぎるのは、A様の暗殺だった。
一番その座に近い人間を排除しようとするだろう。
広い敷地を駆け回る。
明高「…そんなに急いでどうかしたのか？」
突然話しかけてきた朱家の若様の一人、朱明高。
荒い息を鎮め、焦りを隠した。
羅漢「A様を探しておりまして。」
緊張が走る、この男の考えていることはよくわからない。
頭が切れるらしいが、権力争いには加担しない。
明高「Aお兄様だったら、
先程あそこにいたぞ。」
羅漢「教えていただき、ありがとうございます。
では、私は。」
礼をして、立ち去ろうとしたときだった。
背後から、何者かが縄で首を絞めた。
羅漢「くっ、」
強い力で締められ、息が詰まる。
意識がだんだん遠のいて、それを見ていた明高が何やら口を開いた。
明高「もう、やめろよ。死ぬだろ」
その合図と共に話される感覚はあったが、意識が朦朧としていた。
明孔「どうせ殺すんだから、変わらないだろ」
おぼつかない意識の中、瓜二つの姿をした二人を見た。
___早く、A様に伝えなければ…
そう思うのに、動かない体に鈍い痛みがはしった。
ドンッ
その頃、Aは急いで死んだ先代を確認していた。
梅林「お父様は…本当になくなったの？」
「えぇ、」
梅林「…これで貴方の席は確定よ」
「仮にも、父親が亡くなり悲しくないのですか？」
わかりきったことを、何故か聞いた。
梅林「なら、貴方はお父様に心を痛めたことはある？」
「ありませんね…」
やっぱり、この家のものは皆どうかしているのだ。
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作者名：染子 | 作成日時：2022年1月17日 14時
