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「…」
機嫌の悪いA様に声をかけた。
羅漢「あれで、よかったのですか?」
よく澄んだ瞳が怒ったように睨みをきかせる。
まさか、藍家の当主ともあろうお方が気に掛けるとは思っていなかった。
それは、彼女も同じだったのだろう。
「黙れ、
…どいつもこいつも面倒だ。」
前をゆくその姿に顔が見えずとも戸惑っているのはわかった。
「たかが、少し共にしただけで一体何がわかるというのだ。」
羅漢「姑蘇藍氏と交流を深めることは得策ではなかったのでしょうか…?」
「馬鹿を言うな、なんでもかんでも助ける奴らは扱いが悪い。
正義を貫くのが奴らの信念だ。
下手をすれば、邪魔をされるのが落ちだろう。」
この世の悪も善も興味はない。
他人の不幸に手を差し伸べるほど暇ではない。
くだらない、
_手を貸しましょう。
あの眼差しも、心底気に入らない。
「…唯一認めるとするなら、
彼の奏でる音はよかった。
最後まで聴くことができなかったのに…」
寝落ちしてしまったあの曲の最後を、
もう聴けないと思うと少しだけ惜しい。
鏡に映る、父親の服を飾った己の姿。
息を吸い、言い聞かせる。
「…目的を見誤るな、覚悟が必要なんだ。」
目的のためなら、なんだってする。
そうだ、そのためならあんな男の戯言など忘れてしまったほうがいい。
奪い、踏み潰す。
ながたっらしい廊下を突き進み、あの出戻り婆婆の元へと足を進める。
梅林「…よく似合ってるわ」
春雷の面影をうっとり見つめる梅林に、
綺麗に彼は微笑んだ。
「えぇ、行きましょうか。
伯母様」
それがたとえ、どんな結末を迎えようと踏み込んだからには戻ることなどできやしない。
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作者名:染子 | 作成日時:2022年1月17日 14時