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「遅かったじゃないか、羅漢」
その美しい池のような瞳が彼を捉えた。
古くから彼女に仕える者であり、信頼を寄せている
羅漢「すみません、」
素直に謝り、そして私の姿を捉え礼儀正しく礼をした。
叔父よりも歳はとっていない、だが若者なわけでもなさそうだった。
彼女から羅漢が来ることは知ってた。
幼い頃から彼女に仕かえてきた、羅漢に少し興味があったのは認めよう。
_彼女が唯一、信頼する部下
そう思っていたのは間違いなのかもしれないという思考に陥る。
「その風呂敷は?」
羅漢「梅林様がこれを着て出席するようにとのことでございます…」
羅漢の額には包帯が巻かれていた。
しかもまだ新しい、
彼には片腕がないことを聞いたことがある。
そんな彼に彼女は夜狩りや危険なことはさせないだろう、
だとしたらここに来る道中でできたであろうその傷に少しでも反応するはずだ。
彼女の性格上、自分の所有物に触れられて黙っているようなことはない。
それなのに、何故黙っているのか?、
傷ができた経緯を想像できるからなのか、彼女が屈してしまうほどの裏があるのか。
「…わかった。」
気づいた違和感に不安がよぎる。
曦臣「…朱の若様、
何かあるのであれば、私を頼ってください。
話だけでも聞くことはできます。」
助けを求める、ことなど彼女には屈辱かもしれない。
だが、孤独に突き進む姿を黙っていられなかった。
「…この私が貴方に、助けを求めると?」
鋭い視線が貫いた。
屈強な態度が目立つのに、ふとした時の憂いその表情はなんとも言えない哀愁が漂っている。
_儚く、散ってしまいそうだ。
「なにを勘違いしているかわからないが、
私は貴方を信用したことはない。
他人の分際で、何を言う?」
私の思いと裏腹に、冷たい視線が蔑むように睨む。
「_迷惑だ、二度と関わらないでもらいたい。」
吐き捨てられた言葉に、彼女は振り返ることなく通り過ぎていった。
その背を目で追うことしかできない。
どうして、止めようとしているのかもわからなかった。
だけど、止まってほしかった。
羅漢が少し振り返り、深く深くお辞儀をした。
その表情はなんとも言えないものだった。
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作者名:染子 | 作成日時:2022年1月17日 14時