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月は明るく夜の街を輝らした。
酒を煽りながら、夜景を嗜む。
片手にいた妓女が感嘆の声を漏らした。
女「嗚呼…、若様の美貌は女も顔負けですわ」
月夜に佇む彼の姿に妓女は息を飲んだ。
妓女はその腕に擦り寄い、甘い声を出し熱を帯びた瞳で見上げた。
男はその様子に妖気な微笑みで返した。
『貴方は、寂しすぎるからいけないのだわ。』
ある人は彼を、色魔だと言う。
男にしてはいささか白すぎる綺麗な肌に、
天女のような黒く艶のある長い髪、
憂い影を落とす瞳は、睡蓮が咲く池のように青く澄んでいた。
美しすぎる男は、己の容姿をよく知り、そしてそれを逆手に色沙汰を楽しんだ。
花街に月に一度は訪れ、それでも飽き足らず家にしかえている女にも手を出す。
ついには、家門の弟子たちにも手を付けだすほど。
男は持っていた酒を机に置き、開けていた襖を閉め妓女に近づいた。
「私は美しい花を放置するほど、馬鹿じゃない。」
男であるのに、まるで天女のような笑みをした彼に妓女はゴクリとつばを飲み込んだ。
今日も、花街の夜の快楽に溺れる。
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作者名:染子 | 作成日時:2022年1月17日 14時