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第九十三話 彼女の本心はどれ? ページ12

――悟ヶ原家邸宅―待機部屋――ナナシside



[はぁ…………。]


自然とため息がこぼれる。


忙しかったからそんなに気にしてなかったけど、結構やばいことやってるんだよなぁ。


それにしても、なんで母親―――秋さんは偽ものになってるんだ?
わけわっかんないや。




「なんだナナシ、ため息なんかついて。」



東野さんが珈琲を二人分持ってきていた。

片方を、僕に渡す。



[嗚呼、ありがとう。東野さん。]


「どういたしまして。それで?どうかしたのか?」



近くにあった椅子を手繰り寄せながら僕に云う。



[…………零の思考がわかんないなぁーーって。僕は一応は零の異能生命体なんだけど、
 こういう風に自我があるからさ。僕を好き勝手させてるメリットはほとんどないんだよ。]


「メリット?」


[うん。自我があるからこそ、欲もある。人間とほとんど変わらないからこそ、
 失敗もする。もしかしたら裏切るかもしれない。
 デメリットを考えれば、僕を外には出さないし、自我も消しておいたほうがいい。
 事実彼女にはそれができるし。それに、今回の覚決めもそう。]



東野さんは黙って聞いている。


[大切な、愛する家族を陥れるような行為なんだよ。どうしてあんなにあっさりと
 認めたのか。いくら夏目先生の云う通り、最適解だったとしても、零には拒否権があった。
 感情論で押し切ることもできたはずなんだよ。

 あんな態度だったとしても、ちゃんとした、幸せな家族なんだよ。利用なんて、関係ないのに。]



その通りだった。利用関係やらなんやら言ってたけど、宗太さんや秋さんは零を、
とても大切にしてるんだ。もちろん零も。

ただ、愛し方を知らないだけなのに…………。


目頭が熱くなった。

そっと手を握り締める。



今まで黙っていた東野さんが、そっと口を開いた。



「俺は、彼奴とも、お前とも、過ごした時間は少ない。だから、俺の主観でしかないが、
 ……………………彼奴は、冷静すぎるんだ。自分の気持ちよりも、組織の利益を優先する。」


「何もないと知っていながらも、それ以外の、存在価値を知らないんだろう。
 だから、彼奴は自身を犠牲にし続ける。まぁ、俺的にはそんなもんだな。

 多分、もっといろいろ考えてるんだろう。きになるなら、聞けばいいしな。」



東野さんは、最後に肩をくすめて笑った。






――NxstTim――?

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作者名:吸血蝶 | 作者ホームページ:なっしんぐ  
作成日時:2018年3月21日 20時

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